『一般気象学』から学ぶ「地球の熱収支」について
前回に続き一般気象学のまとめ。
今回は熱収支についてまとめる。
💰地球大気の熱収支
前提
地球のエネルギー99.97%は「太陽放射」により賄われている。 残り0.03%は火山活動などによる「地熱」や、月の引力などの「潮汐」などもあるが、数値から見て微々たるものである事が分かる。
太陽定数
地球大気の上端で太陽からの放射線に直角な方向の単位面積が単位時間に受ける放射エネルギーを「太陽定数」と呼ぶ。 太陽定数は以下の式で表される。
1.37×10^3Jms
地球のアルベド
鏡を見れば分かるように、入射があれば反射もする。
地球における太陽放射の入射量に対する反射量の割合を「地球のアルベド」という。 反射量は約30%であり、つまり太陽放射の30%は宇宙に反射されている。
放射
前述した通り、太陽からの放射もあれば、地球の反射による放射もある。前者を「太陽放射」、後者を「地球放射」という。
太陽放射
最大放射強度
太陽放射の最大放射強度は0.475μmなので、「短波放射」とも呼ばれる。
吸収
「地球のアルベド」で述べた通り、30%を反射するため、70%は地球上で吸収される。
- 地球の大気上端だと、黒体放射スペクトルと近似
- 0.31μmより短い紫外線は、前回エントリーの「地球大気の鉛直構造」で述べた通り、熱圏や成層圏で吸収される
- 0.77μmより長い赤外線は、水蒸気により吸収される
- 2~5μmあたりは、二酸化炭素も吸収に寄与する
- 全体の約49%は地面・海面にて吸収される
地球放射
最大放射強度
地球放射の最大放射強度は11μmなので、「長波放射」とも呼ばれる
吸収
前項で述べた通り、約70%が地球上で吸収される。これを再放射する。
- 0.77μmより長い赤外線は、水蒸気により吸収される
- 2~5μmあたりは、二酸化炭素も吸収に寄与する
- 8~12μmあたりは、大気による吸収が弱い
- 窓領域と呼ばれる。地球大気外に到達するためほぼ黒体放射と言える。
- これを活用し、輝度・温度を測る事で、人工衛星から海面温度を測定することができる
- 窓領域と呼ばれる。地球大気外に到達するためほぼ黒体放射と言える。
- 地面・水面に潜熱するエネルギーもあるが、大気の移動や蒸発によりやがて大気や雲に移り、再放射される
散乱
熱ではなく光。電磁波が空気分子やエアロゾルにぶつかる事で生じる、二次的な電磁波を「散乱」と呼ぶ。
レイリー散乱
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径より非常に大きい場合(気体分子など)の散乱。
- 散乱光:日中晴れた"空"が青く見える、日出前や日没後の"空"が赤く見える
- 直接光:日出や日没の"太陽"が赤く見える
ミー散乱
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径と同程度(エアロゾルなど)の場合の散乱。
- 太陽光と同じ白色光(雲が白く見える。空気が汚れている日の空。)
幾何光学
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径より非常に小さい場合の散乱。
- 虹はこれにより発生する
まとめ
このエネルギー収支と、力学や熱力学を使う事で、どのような気象現象が発生するのかというのが見えてくる、はず。
関係ないけど、別の本を読んでる時に「17,18世紀に確立したニュートン力学は時間を考慮していないため可逆的である。19世紀に熱力学が登場し時間を考慮する必要が出てきた。ニュートン力学(古典力学)だけでは物理現象の説明はできない。」みたいな記述があって「へぇ~~~」となった(急激な語彙力の低下)