『一般気象学』から学ぶ「地球大気の運動」について
前回に続き一般気象学のまとめ。
これまで「宇宙や地球がどのように誕生し、地球はどのような大気構造になっているか、その大気の熱収支はどうなっているか」というところをまとめてきた。
今回は「地球大気がどのように運動しているのか」についてまとめていく。
地球は大気に覆われていて、公転や自転、力学や熱力学によって絶えず大気は運動・循環している。 地球規模の大きな運動から、つむじ風程度の小さな運動までまとめる。
😶前提知識
熱の伝達は、以下3形態にて行われる。
伝達形態 | 説明 |
---|---|
伝導 | 「物質」を媒介とした熱の移動(例:紅茶の熱がスプーンに伝わる) |
放射 | 「電磁波」により熱が伝達される(伝導との違い:物質を介さない、なので真空でも伝わる) |
対流 | 「流体」が高温の物質を低温に移動させる(伝導との違い:熱と共に物質も移動させる) |
大気は流体であり、流体が遠心力や温度差により掻き回されるため、大気の運動が引き起こされる。
🌎大気循環
✔南北方向の循環
まず、「温度勾配」は南北方向に大きい事は我々の経験上理解している。赤道付近は暖かいし、極地方付近は寒い。 熱力学の第2法則「熱は高い方から低い方に伝わる」の通り、大気は南北方向に循環する。
次に、地球は「自転」している。自転によりコリオリ力が生じる。 これにより対流は3つのセルに別れてしまう。(参考:大気と海の科学)
名称 | 説明 |
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ハドレー循環 | 赤道付近で上昇。南北30度付近で下降。 |
フェレル循環 | 緯度50~60度付近で上昇。緯度30度付近で下降。 |
極循環 | 中緯度付近で上昇。極地方付近で下降。 |
✔東西方向の循環
南北方向の循環で説明した通り、温度勾配と自転によって東西方向の循環も生じる。
名称 | 説明 |
---|---|
貿易風 | 赤道付近。北半球では北東風、南半球では南東風。 |
偏西風 | 中緯度。北半球では南西風、南半球では北西風。 |
極偏東風 | 極地方。北半球では北東風、南半球では南東風。 |
ウォーカー循環 | エルニーニョ・ラニーニャによる赤道付近での東西方向の大気循環。 |
✔テレコネクション
温度勾配ではなく、気圧勾配により生じる大気現象。
離れた2つ以上の地域で気圧がシーソーのように伴って変化する現象。 エルニーニョ・南方振動もこれに該当する。(参考:Wikipedia)
✔マクロスケール(水平スケール2000km~)
大気運動の水平スケールが2000km以上であり、約2000km~10000kmまでを「総観規模」、10000km 以上を「惑星規模」と呼ぶ。
大気現象としては、「テレコネクション」「モンスーン」「プラネタリー波」「傾圧不安定波」などが該当する。
プラネタリー波・モンスーン・傾圧不安定波
どれも、発生原理としては海陸風と同じであり、大陸と海洋の温度差によって生じる。(参考:色と形で気象予報士!)
名称 | 説明 |
---|---|
プラネタリー波 | ヒマラヤ山脈、ロッキー山脈などの大規模な山岳(これが原因で成層圏で突然昇温が発生する) |
モンスーン | ヒマラヤ山脈とチベット高原 |
傾圧不安定波 | 南北方向の気温の差 |
✔メソスケール(水平スケール2km~2000km)
大気運動の水平スケールが2km~2000kmであり、「中規模」とも呼ばれる。
大気現象としては、「ベナール型対流」「積乱雲・メソ対流系」「台風」「局地風(海陸風・山谷風)」「フェーン現象」などが該当する。
ベナール型対流系
下面が暖められ、上面が冷やされ、層の両面に一様な温度差が現れた時、小さな対流がたくさん現れる現象。
冬型の気圧配置の際に現れる筋状の雲があるが、あれはベナール型対流によって発生している。 (暖かい対馬海流と、冷たいシベリア気団により、下面と上面に温度差が発生。)
積乱雲
「降水セル」「降水細胞」とも呼ぶ。
- 成長期(発達期)
- 雲の温度は周りより高く、全て上昇流
- 雲粒・雨粒・氷粒子ができるが、上昇流が強いので地上に落下してこない
- 成熟期(最盛期)
- 合図は、下降流の始まり(大きな雨粒や霰などが、周囲の空気を一気に引きずりおろす)
- 上昇流と下降流が共存しているが、下降流が強くなり、雲底に冷気が溜まる(冷気プール)
- 局所的高気圧となり、冷気外出流やガストフロント(*1)が発生
- 減衰期(消滅期)
- 合図は、上昇流の消滅(つまり下降流のみとなり降水が続く)
*1: ガストフロント
- 形成期
- 成熟期の積乱雲の雲底から冷たい下降流が降りてくる(ダウンバースト)
- 成熟初期
- 下降流が勢いよく地表面にぶつかり水平に広がっていく
- 成熟終期
- 減衰期の積乱雲から遠ざかる
- 衰退期
- 積乱雲がなくなっても遠くまで伝わることがある(この冷気が他の暖気を押し上げて新たな積乱雲を産む=自己増殖)
メソ対流系
複数個の降水セルが同時に存在し、メソスケール対流系を構成。
- 団塊状メソ対流系
- 線状メソ対流系
- 比較的速く動くものを「スコールライン」、遅く動くものを「降水バンド」と呼ぶ
- 空気は中層から上層にかけてゆっくり上昇し、後方に向かいながら層状性の雲を作る
- スコールラインはあまり日本では見られず、熱帯やアメリカで見かける
- 「ビッグビルディング」もある。次々に新しいセルが作られ、風下側に流される
熱帯低気圧・台風・ハリケーン・サイクロン
- 名称と定義
- エネルギー源
- 台風の特徴
- 台風の形成
- 渦運動
- 地表摩擦による収束
- 大気境界層上面を通る上昇流
- 積乱雲群の発達
- 凝結による潜熱の放出
- 中心の高温化・気圧の低下
- 渦運動を強化させ、最初に戻る
- 中心の高温化・気圧の低下
- 凝結による潜熱の放出
- 積乱雲群の発達
- 大気境界層上面を通る上昇流
- 地表摩擦による収束
- 渦運動
✔ミクロスケール(水平スケール~2km)
大気運動の水平スケールが~2kmであり、「小規模」とも呼ばれる。
大気現象としては、「竜巻」「つむじ風」などが該当する。
☁️気団と前線
「気団」とは、大気が長い間停滞していると生じる特有の性質を持った空気塊。
「前線」とは、2つ以上の気団の境界線。
- 気団の分類
- 温度による分類
- 熱帯気団(Tropical)
- 寒帯気団(Polar)
- 極気団 (Arctic)
- 湿度による分類
- 大陸性気団(Continental)
- 海洋性気団(Maritime)
- 温度による分類
- 気団の種類(日本付近)
- 季節による勢力の違い(日本の場合)
- 前線の一生
- 形成過程
- 水平面上で温度傾度が増大すると前線が形成される
- 収束を伴ったり、伴わなくても変形場があれば形成される
- 消滅過程
- 水平面上で温度傾度が減少すると前線が消滅する
- 形成過程
- 補足
- 低気圧には前線ができるが、高気圧には前線はできない。
- 低気圧では、周囲から暖気と寒気が集まるため境目がはっきりするため。
- 高気圧では、上空に集められた空気が緩やかに吹き降りるので境目がはっきりしないため。
- 参考:Yahoo!知恵袋
- 低気圧には前線ができるが、高気圧には前線はできない。
😶まとめ
前回は「放射」についてまとめたが、今回は「対流」がメインであった。
大規模な現象から小規模な現象まで、幅広い大気現象が我々の生活に影響を与えている事が分かる。 日本周辺に属する気団や、亜熱帯地帯で発生するメソスケールな現象。それらを運んでくるマクロスケールな現象など。
次回は「降水過程」についてまとめようかな。