「武士道」を読んだけどまとめてなかったのでまとめた。
数年前に読んだ「武士道」のメモがGoogleKeepにあったので、まとめ直して投稿しておく。
なお、本書はPHP文書から出版されている。(武士道は様々な出版社から出ているが、僕は古本屋でこれを手に取った。)
⚔武士道とはなにか
- 武士道は、ノーブレスオブリージュであり、道徳的原理である。成文法ではない。
- 武士道は、誰か一人が創造したものでなく、長きに渡って自発的に醸成・発達したもの
- 武士道は、武家諸法度からではなく、封建制の確立が始まり
- 武士道は、「小さな子をけっしていじめず、大きな子から逃げなかった者」である(byトム・ブラウン)
- 「翻訳荒いけど許してね」by新渡戸
⚔武士道の源
- 仏教と神道から来ている
- 仏教からは、心の平静さ、生に執着せず、死と親しむ(禅の教えによるもの。方法として座禅と瞑想)
- 神道からは、忠誠心、尊敬、孝心(「汝自身を知れ」)
- 孔子と孟子からも来ている(思想は知ってるが実践できない者は冷笑された(論語読みの論語知らず、書物の虫))
- 武士道が目指すは「知行合一」
⚔義
- 正直で、率直で、男らしい徳目
- 死すべきときには死に、討つべきときには討てる、自分の身の処し方をためらわずに決断できる力
- 孟子「仁は人の良心(=愛)なり、義は人の道(=規範)なり」
- イエスもまた、義の道を説いた一人
- 義理とは、
- 正義の道理
- 元々は義務の意味合い
- 但しこれは人間が作り出した産物であり、恣意的な習慣により屈服させられるような社会的条件下にあるがために曖昧になり堕落した、詭弁のために用いられ非難を逃れるための臆病にまで堕ちた
⚔勇
- 生きるべきときに生き、死ぬべきときに死ぬ
- 孔子「義を見てせざるは勇なきなり」
- ニーチェ「汝の敵を誇りとすべし、しからば敵の成功はまた汝の成功なり」
- 勇気、度胸、忍耐。これらを身につける事で平静、冷静、余裕に繋がる(心の広さ)
- 勇気あるものはスポーツの要素すら見られる(普通の人には深刻でも、遊びのようであったりする)
⚔仁
- 王者の徳であり、女性的な優しさと説得力を持つ徳
- 最も気高い徳であり、偉大なる王者にこそふさわしい徳
- 相対するのが義
- 伊達政宗「義に過ぎれば固くなる。仁に過ぎれば弱くなる。」
- 愛、寛容、他者への情愛、慈悲
- 弱きを慈しみ、傲れるを挫く
- 仁がなければ人ではない(孔子も孟子も語る)
- 孟子「惻隠の心は仁の端なり」←孟子らしい!!!
- 詩や音楽は苦悩を和らげるためにあり、また、他者の気持ちや苦しみを慮り尊重する事にも繋がる
⚔礼
- 他を思いやる心が外へ表れたもの(品性の良さのために行われるものではない)
- 最高形態は愛に近しい
- 音と音楽が同一ではないように、上部だけの作法が礼儀ではない
- 優美とは、無駄のない動きであり、作法であり、礼儀に通ずる
- 泣く人と共に泣き、喜ぶ人と共に喜ぶのも、"ひどくおかしな"礼である(真実を語ることと礼儀正しくあることのどちらがより重要か・・・日米で正反対の答えになるだろう)
⚔誠
- もっとも若い徳
- 伊達政宗も菅原道真も説いている
- 孔子は「中庸」において誠を尊んだ
- 嘘をつかず二言もない、あったら罪をも受ける覚悟。正直であること。
- 礼を欠くより、嘘をつく方が重い
- 礼を欠かないためにつく嘘は、虚礼であり、甘言による欺瞞
- ただし、正直を守るための嘘はつくのは然るべき(正直は最善策であるため)
- 誠がもたらす3要因・・・産業、政治、哲学
- 富を権力者に集中させないため、貴族から商業を遠ざけた
- 富の道は名誉の道ではない
⚔名誉
- 人格の尊厳と明白なる価値の自覚
- 幼児期から教え込まれる武士の特質
- 不名誉や恥、羞恥心は事の始まり(新井白石、カーライル、蒙子)
- 武士は病的なまでに名誉に敏感
- 侮辱には死を以て報復
- 食い止める役割を果たすのが我慢、忍耐、寛容
- 侮辱には死を以て報復
- 名誉は境遇から生まれるものではなく、個人個人が役割を全うすること
- 目標は知識や富ではなく名誉(ただの見栄や評判であっても最高の善であると尊ばれていたため
⚔忠義
- 主君に対する服従や忠誠
- 孝=子から親に対する敬い
- 武士道は個人よりも公を重んじる。愛する者のために死ぬとしてもそれが何だというのか、キリストも同じように言っているではないか。
- ソクラテス「国家や法律『お前はわが下に生まれ、養われ、かつ教育も受けたのに、お前もお前の祖先も、私の子供でも従者でもないと、あえて言うのか』」
- 新約聖書「カエサルのものはカエサルへ」
- 佞臣と寵臣は軽蔑された(君主と臣下の意見が分かれる時、臣下の取るべき忠義は君主の過ちを正すこと。奴隷になってはならない。)
⚔武士道はどのように教育されたか
- 品格の形成が第一に考えられ、思慮や知識などは重要視されなかった
- 武士道を支える3つの柱「智」「仁」「勇」
- 文学・・・娯楽
- 哲学・・・軍事問題や政治問題のため
- 書・・・・・絵画的であり芸術的
- 柔術・・・攻防のための解剖学的知識
- 数学・・・軍事教育には必要だが教育からは外されていた(封建時代の戦闘は科学的な正確さを持っていなかったため、損得勘定や金銭を嫌うため)
- 「父母は天地のごとく、師君は日月のごとし」との格言の通り、教育者は優れた人格を持つ
⚔克己
- 克己の理想は、常に平静を保つこと
- 「喜怒を色に表さず」
- 「沈黙は金、雄弁は銀」
- 「口開けて 腸見する 石榴かな」
- 日本人にとって笑いとは、悲しみや怒りとのバランスを取る役割
- 感情の抑制を半ば強制されるため、安全弁として詩歌に綴った
- 克己は、頑固さや偽善者を生んだり、愛情を鈍らせたりする事もあるが、「平静を保つ」という理想の追求の結果である(悲しい・・・)
⚔「切腹」と敵討ち
- 義の実践、誠の証明
- 切腹
- 敵討ち
⚔刀
- 魂と武勇、忠義と名誉の象徴
- 幼い頃から振り方を習い、5歳になると武門入りの儀式を行い、15歳になると元服(成人)し一人立ちする
- 刀に対する無礼は、持ち主に対する侮辱と同じ
- 工芸家の関心や技巧、本人の虚栄心を揺さぶり、太平の世は芸術的になってきた
- 必要もないのに刀を振り回すのは卑怯や臆病のレッテルを貼られた
- 勝海舟は一度も人を斬り殺した事がない。武士道の究極的な理想は平和。
⚔武家の女に求められた理想
- 求める理想像の、半分はアマゾネス的な勇猛果敢さ、半分は家庭的
- 勇猛果敢さ:自分自身(貞操)と家庭(名誉)を護るため
- 家庭的:婦は箒、妻(wife)は織り手、娘(daughter)は乳絞り。音楽や舞踊や読書は嗜みであり、社交の場で披露するのは務め
- 女性は夫や息子に忠義し、夫や息子は主君に忠義し、主君は天の命に従う
- 奴隷的ではなく内助の功であり、内側からの助け、すなわち武士が主君に忠義するのと同等
- 身分的なものは武士階級のみ。農工商ではほぼ平等。法廷なんかもっと平等。
- 身内を誉めるのは自分を誉めるに値し礼儀に反する、なので愚父や愚母と呼ぶ。
⚔武士道はいかにして「大和魂」になったか
- 武士道の道徳体系は、徐々に民衆の間にも広がった(美徳は悪徳に劣らない伝染力を持っている)
- 民衆に対して道徳律の規範を自らを以て示すことで民衆を導いた
- 民衆の娯楽(教育・寄席・浄瑠璃など)にも武士が描かれ、理想や憧れの的となった
- 民衆の中でも「男伊達」と呼ばれるリーダー的存在がいて、そこに対して忠義していた。これにより大和魂が根付いたといえよう!
- 大和魂は桜花と似ている(自然に生える。日本固有。派手さを誇らない。ほんの一瞬香る。)
⚔武士道はなお生き続けるか
- 武士道の特質は、ヨーロッパの例による比喩や説明で分かる通り「武士道のみ」ではない
- 形式こそないものの、国民を鼓舞する原動力であり、維新回天の原動力である
- 日本は西洋の文化を、西洋から教わったのではなく自ら学んだ
- 影響を受けたからではなく、劣等国として見下されることに耐えられない名誉心から来る行動
- 武士道の欠点は名誉心(感じやすく激しやすい性格や尊大な自負心)
- 「忠義」や「名誉」に感化される(キリスト教などの異教徒に突き動かされないのは血がそうしてる)
⚔武士道が日本人に遺したもの
- 封建制の終わりが武士道の終わり
- 騎士道は封建制から離れたのちキリスト教に引き取られたが、武士道にはそのような宗教はなかったため自力で生きた
- 時代の変化により、教育や産業などが発展し、刀や弓矢は意味をなさなくなった。武徳が築いた国家(都市国家や帝国など)でさえ永遠ではない。
- 人は"臣下"という身分ではなく、誰もが平等である"市民"に成長した
- 消えかかっているが、代わりが見つかってない。体系としては死んだが徳目としては残っている