『気象予報士かんたん合格テキスト<学科専門知識編>』から学ぶ「さまざまな気象予報」について
これまでは、熱収支や降水過程などの大気現象や、そこで観測される気象要素についてまとめてきたが、今回は『観測した気象要素をどのようにして予報に繋げていくか』についてまとめていく。
使用したテキストとしては、前回同様『気象予報士かんたん合格テキスト<学科専門知識編>』です。
🔢数値予報
ある時刻の大気の状態(風向・風速・気圧・温度・湿度など)を測り、大気の状態の変化を「運動方程式」「熱力学方程式」などから算出する。
- これらの理論式の多くが偏微分方程式の形なので、生の気象データだと扱いづらいらしい
- →格子点を設ける事で、数値を扱いやすくしている
- 局地的現象には計算が追いつかなったが、以下がきっかけとなり、短時間で莫大なデータの解析や計算ができるようになった
✓数値予報の流れ(解析予報サイクル)
- ランダムに存在する観測地点
- アメダスの場合は約17km間隔
- その他高層気象や衛星なども使用しているはず
- 水平格子を作る
- LFMの場合、2km間隔
- MSMの場合、5km間隔
- GSMの場合、20km間隔
- 週間EPSの場合、40km間隔
- 台風EPSの場合、40km間隔
- 格子点上の値を決める(=客観解析)
- 「第一推定値(前回の予報結果)」を、格子点周辺の「観測値」に補正して、格子点上の値を決定
- 計算には「四次元変分法」を用いる
- 必要な値を初期化
- 実際の大気とは異なる「慣性重力波」がノイズとして現れるため、観測値と予測値が一致したとしても必ず行う
- 将来の予想を数値予報モデルで計算
- LFMの場合、10時間先
- MSMの場合、39時間先&51時間先
- GSMの場合、5.5日先&11日先
- 1に戻る
- LFMの場合、毎時
- MSMの場合、39時間先は3時間毎、51時間先は12時間毎
- GSMの場合、5.5日先は12時間毎、11日先は12時間毎
観測データについては、品質管理を行った上で、数値予報に用いられている。 (人的ミスによる異常値やあらかじめ設定された閾値超えなどを検知し、乖離が激しい場合には観測値を使用しないなどする)
✓数値予報モデル&予報目的
局地モデル(LFM:Local Forecast Model)
- 目的
- 局地予報
- 防災気象情報
- 飛行場予報
- 降灰予報
メソモデル(MSM:Meso-Scale Model)
- 目的
- 防災気象情報
- 航空気象情報
全球モデル(GSM:Global Spectral Model)
- 目的
- 短期予報
- 量的予報
- 府県天気予報
- 台風予報
- 週間天気予報
台風アンサンブル予報モデル(台風EPS:Ensemble Prediction System)
- 目的
- 台風進路予報
週間アンサンブル予報モデル(週間EPS:Ensemble Prediction System)
- 目的
- 週間天気予報
- 異常天候早期警戒情報
✓数値予報の短所
- スピンアップ
- 対流性の降水量の予報精度
- タイムステップの制約
- 水蒸気が大きく関与する予報計算の誤差
- 擾乱のスケールが小さな場合の予報精度と期間
- 予報期間の限界
- 予報精度の限界
- 積雲対流規模の鉛直流の計算精度
- 予報値の精度
✓予報誤差の種類と要因
- 地形データの粗さ
- 大気の運動の持つカオス性
- 系統的誤差
✓天気予報ガイダンス
予報予測値を必要な天気や要素に翻訳したり、地形により生じる系統的誤差を除去などする工程。
ガイダンスの作成手法としては、以下の通り。
名称 | 説明 |
---|---|
MOS手法(Model Output Statistics) | 説明変数(過去の数値予報結果の大気状態)と目的変数(雨量などの観測値)との「統計的関係式」を求めておく。これを数値予報結果に適用して予報資料を作成。 |
PPM手法(Perfect Prognosis Method) | 説明変数(実際の大気状態)と目的変数(雨量などの観測値)との「統計的関係式」を求めておく。これを数値予報結果に適用して予報資料を作成。 |
カルマンフィルター(KLM) | "事前に求めておいた予測式の係数"を"直近の観測値"を用いて修正量を最適に補正する |
ニューラルネットワーク(NRN) | 人工ニューロンをネットワーク化し、その結合の強さを学習させて予測誤差を最小化する |
ガイダンスの種類としては、以下の通り。
名称 | 説明 |
---|---|
降水確率ガイダンス | 予報対象領域内での地点確率の平均値 |
発雷確率ガイダンス | 予報対象領域内の少なくとも1地点で発雷する確率 |
降水量ガイダンス | 予報対象領域内で所定時間内に降る平均降水量 |
大雨確率ガイダンス | 予報対象領域内の少なくとも1地点で3時間のうちに大雨が降る確率(暖候期は30mm以上、寒候期は20mm以上) |
高潮ガイダンス | 予報中心円とその周辺を台風が進む場合の、各々1時間ごとの潮位・潮位偏差・予報期間内の最高潮位・起時 |
気象要素とガイダンスの代表的な組合せは、以下の通り。
気象要素 | ガイダンス手法 | 対象領域 |
---|---|---|
天気 | NRN | 20km格子 |
降水量 | KLM | 20km格子 |
降水確率 | KLM | 20km格子 |
気温 | KLM | アメダス地点 |
風 | KLM | アメダス地点 |
湿度 | NRN | 気象官署 |
大雨・発雷 | NRN | 二次細分区域 |
🗣️短時間予報・短期予報・中期予報
✓ナウキャスト(~1時間)
- 降水ナウキャスト
- 1km間隔で、5分ごとに、1時間先まで予報
- 降水域の移動速度がその後も変化しない事を仮定して予報
- 過去1時間程度の移動量や、高層観測から求めた風により、移動予報を行う
- 降水域の地形性効果による盛衰傾向を考慮して予報
- レーダーによるエコー頂から、雲の鉛直方向の発達度を解析可能(背の低い雨雲や雪雲は、高い山岳を超えられない)
- 雷ナウキャスト
- 1km間隔で、10分ごとに、1時間先まで予報
- 雲頂温度が-20度以下になると雷が発生しやすくなる
- 4段階の活動状況
- 1)雷の可能性あり:現在雷は発生していないが今後雷の恐れあり。雲頂温度が-10度以下。
- 2)雷あり:電光や雷鳴が確認できる。現在発雷はしてないが間もなく落雷の起きる可能性あり。雲頂温度が-20度以下。
- 3)やや激しい雷が発生:落雷が発生している。
- 4)激しい雷が発生:落雷が多数発生している。
- 2種類の放電
- 雲放電:雲内のみでの放電。
- 対地放電:雲と地上間における放電。落雷。
- 竜巻発生確度ナウキャスト
✓短時間予報(目先数時間)
- 降水短時間予報
- 1km間隔で、30分ごとに、6時間先まで予報
- 予報の初期値には、解析雨量を用いる
- 降水域の移動は、パターンマッチング法や下層の風予想を用いる
- 地形性効果による降水の盛衰も考慮する
- 補外予報(重要)
- 前半3時間は補外予報の比率が高く、後半3時間はメソモデル予報の比率を高くしている
✓短期予報(3~48時間)
- 府県天気予報や地方天気予報などがある
- 注意報や警報も短期予報に含まれる
✓中期予報・週間予報(~7日先)
- 「全般」「地方」「府県」の形式で毎日発表
- 予報の信頼度は、たまに後半でよくなる事がある(低気圧・高気圧の移動による位相のズレ)
✓降水確率予報
- 予報期間中に1mm以上の降水がある確率を予報
- 0%~100%の11段階で発表
- "確率"の基礎知識が重要
- 0~6時で20%、6~12時で20%、12~18時で20%、18~24時で20%の場合(20%=1/5)
- 1 - ( 1 - 1/5 )4 ≒ 0.59 = 59%/日
- 0~6時で20%、6~12時で20%、12~18時で20%、18~24時で20%の場合(20%=1/5)
👨👩👧👦アンサンブル予報
単独予報では、以下を要因とした予報誤差が生じやすい。
- 初期値の不確実性
- 予報モデルの不完全性
- 大気が持つカオス性の概念
- 初期値の相違によるバタフライ効果
そこで、観測誤差くらいの僅かな違いを与えた初期値を多数作り、予報モデルでそれぞれの初期値について予報を行う。 これを「アンサンブル予報」と呼ぶ。
- メリット
- 予報時間が長くなるほどばらつき(=スプレッド)が大きくなるが、統計的に考えて、外れ値を除去し、平均を取れば、誤差を縮小できる
- デメリット
- 各メンバーでも同種の系統的誤差を含むため、平均から予報値を算出しても、系統的誤差は小さくできない
✓週間アンサンブル
週間予報を行うために利用される。 全球モデルの解析値で初期値を作成し、総観スケール現象以上の大気現象の動向を解析する。
仕様は以下の通り。
項目 | 形式 |
---|---|
水平分解能 | 全球40km |
鉛直層数 | 100層。最上層は0.01hPa |
初期値作成 | 00UTC&12UTC |
予報時間 | 216時間&432時間 |
メンバー数 | 27メンバー |
週間アンサンブルに関する用語については、以下の通り。
- コントロールラン
- 初期値に人工的な誤差を一切与えずに予報するメンバー。
- 摂動ラン
- 初期値に人工的な誤差(観測や解析の誤差程度)を与えて予報するメンバー。
- メンバー数
- コントロールラン+その他摂動ランで予報を行う。週間アンサンブルの場合は27メンバー。
- クラスター平均
- 各メンバーの予報結果を類似パターンで5種に分類し、平均化して予報を表示。
- センタークラスター平均
- 各メンバーの予報結果の平均値を基準として、それに近い6メンバーを平均した予報を表示。
- 負・正偏差
- 平年値より何度高いか、平年値より何度低いかを示す(気温の場合)
✓季節予報
予報期間が1か月以上のものを「季節予報」と呼ぶ。
以下2点の手法を用いて予報する。
- 力学的数値予報
- 本エントリーの最初に書いた「解析予報サイクル」の通り
- 統計的予報
- 予報期間が長くなると、初期条件(予報を始める時刻の大気状態)よりも境界条件(海面水温や陸面水分、温度や積雪などの状態)の方が、予報に大きく関与する
- 海面水温は、平年値との偏差や分布が変わらない事を前提とする
- 陸面の積雪や土壌水分などは、観測値などから推定した値を初期値として与える
季節予報に関する用語は、以下の通り。
- 平年値
- 過去30年間の平均値
- サンプリングする年度は10年ごとに更新(2023年の場合:1991~2020年)
- 気候的出現率
- 過去30年間のデータを昇順で並べ、1~10番目は「低い」、11~20番目は「平年並」、21~30番目は「高い」
- 夏(6~8月)の場合、1~10番目は「冷夏」、21~30番目は「猛暑」
- 冬(12~2月)の場合、1~10番目は「厳冬」、21~30番目は「暖冬」
1ヶ月予報(力学的数値予報)
1ヶ月アンサンブル予報モデルで予報が作成される。 気候的出現率は10%単位で発表される(予報は1%単位で行われている)。
仕様は以下の通り。
項目 | 形式 |
---|---|
水平分解能 | 全球55km |
初期値作成 | 週2回 |
予報時間 | 1ヶ月 |
予報目的 | 1か月予報、異常天候早期警戒情報 |
1ヶ月予報に関する用語は、以下の通り。
- 東西指数
- 北緯40度と北緯60度の等圧面高度を、東経90度~170度の間の平均を取って比較した高度差
- 東西指数が大きい
- =南北の高度差が大きい
- =偏西風が強い
- =天気は周期的に変化する
- 東西指数が小さい
- =南北の高度差が小さい
- =偏西風が弱い
- =偏西風の蛇行が小さい
- =天気が偏りやすい(悪天と好天のどちらかが続く。寒暖についても同様。)
- 高度場偏差
3ヶ月予報(力学的数値予報+統計的予報)
毎月予報計算が行われる。
予報する出現確率は、以下の通り。
- 3ヶ月平均気温
- 3ヶ月合計降水量
- 月別平均気温
- 合計降水量
- 3ヶ月合計降雪量(日本海側)
暖候期予報(統計的予報)
6~8月を予報し、2月末に発表
予報する出現確率は、以下の通り。
- 夏(6~8月)の平均気温
- 合計降水量
- 梅雨時期(6~7月、沖縄・奄美は5~6月)の合計降水量
寒候期予報(統計的予報)
12~2月を予報し、9月末に発表
予報する出現確率は、以下の通り。
- 冬(12~2月)の平均気温
- 合計降水量
- 合計降雪量(日本海側)
📈予報精度の評価法
✓評価法
以下の対応分割表を用いる。
実況\予報 | 現象あり | 現象なし | 合計 |
---|---|---|---|
現象あり | A | B | G |
現象なし | C | D | H |
合計 | E | F | I |
上記の対応分割表に加え、以下の計算式も用いる。
S=(E*F*G*H)/I
上記の対応分割表を基に、以下の評価法で計算する。
\ | カテゴリー予報 | 注意報・警報 |
---|---|---|
適中率 | (A+D) / (A+B+C+D) | A / E |
空振り率 | C / (A+B+C+D) | C / E |
見逃し率 | B / (A+B+C+D) | B / G |
捕捉率 | A / B | |
スレットスコア | A / (A+B+C) | |
バイアススコア | (A+C) / (A+B) | |
ブライススコア | - | |
スキルスコア | ((A+D)-S) / (I-S) |
それぞれの用語の意味は、以下の通り。
- 捕捉率
- 予報で「現象あり」とした中で、どれくらい実際に発生した現象が含まれていたかの比率
- スレットスコア
- ごく稀にしか起きないような現象の適中率評価
- 稀にしか発生しないので、予報の段階で「現象なし」を除外している
- バイアススコア
- 予報で「現象あり」の回数を、実況で「現象あり」の回数で割ったスコア
- ブライススコア
- 0で完全予報、1で最悪予報
- スキルスコア
- 予報の技術的な難易度を除外した評価法
✓誤差
- 平均誤差(ME:Mean Error)
- 全データの「正解値-予測値」の平均
- 2乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Squared Error)
- 全データの「正解値-予測値」の2乗の平均を計算し、最後に平方根を取ったもの
- (平均誤差では、プラス誤差とマイナス誤差が相殺される欠点があるため、これを捕捉したもの)
✓持続予報
予報する前日の実況値を、翌日の予報値とする。
✓気候値予報
気候値や現象が発生する例年の発生率を、予報期間に適用した予報。
😶まとめ
鉛直構造とか降水過程についてはストーリー性を持たせやすかったけど、ここまで来ると暗記要素が多くなってきてる感じがする。 実際、まとめきれていない単語もたくさんある・・・。
けど、これで概ねまとめられたので、ようやく過去問題に入っていける!!!
流れとしては以下の通りにやっていく予定。僕自身の勉強法というか、脳への定着の仕方は、これが合ってる気がする。
- 過去問を解いて、ちゃんと間違える
- 解説資料を読みながら、それをまとめていく
- 過去10回分が終わったら、「過去問でまとめた内容」と「本ブログにまとめた内容」を、ノートに書き起こしていく
『気象予報士かんたん合格テキスト<学科専門知識編>』から学ぶ「地球大気の観測」について
これまでは一般気象学というテキストを基に気象学の勉強をしてきたが、今回は趣向と共にテキストも変えてみた。
気象学では大気現象を熱力学や流体力学などの側面で学術的に考えていくが、 今回はそういった大気現象をどのようにして観測していくのかをまとめていく。
😶前提知識
地球大気の観測をまとめるにあたり、以下の方針でまとめていく。
- 地上気象観測:地上に設置しての気象観測(局所的)
- 高層気象観測:上空に飛ばしての気象観測
- 気象レーダー観測:地上に設置してレーダーを用いる気象観測(広域的)
- 気象衛星観測:宇宙に飛ばしての気象観測
🏙地上気象観測
✔観測対象:気温
定義
気温に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
最高気温 | 記録に残るのは「0時~24時の観測極値」 天気予報では「9時~18時の最高気温」 |
最低気温 | 記録に残るのは「0時~24時の観測極値」 天気予報では「0時~9時の最低気温」 |
温度単位に関する定義は以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
ケルビン(K) | 熱力学温度(絶対温度)。水の融点が273.15K、沸点が373.15Kであり、その温度間を100分割している。 |
摂氏(°C:セルシウス度) | 水の融点が0°C、沸点が100°Cであり、その温度間を100分割している。 |
華氏(°F:ファーレンハイト度) | 水の融点が32°F、沸点が212°Fであり、その温度間を180分割している。 |
摂氏とケルビンの関係式は「摂氏=ケルビン-273」(250Kの場合、250-273=-23°C)
摂氏と華氏の関係式は「摂氏=5/9(華氏-32)」(41°Fの場合、5/9(41-32)=5°C)
温度単位については他にも「蘭氏(°R:ランキン度)」「列氏(°Ré:レオミュール度)」「靈氏(°Rø:レーマー度)」「??(°D:ドリール度)」「??(°N:ニュートン度)」がある。
観測方法
気温の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
ガラス製温度計 | 水銀温度計で観測。水銀が温度上昇により膨張する物理的変化を利用。アルコール温度計も同じ理論。 |
金属製温度計 | 膨張率の異なる2枚の金属を貼り合わせた金属板が温度変化により変形する事を利用。構造上誤差が生じやすいため精度の高い気温観測には不向き。 |
電気式温度計 | 白金の抵抗値が温度上昇と共に大きくなる性質を利用。気象官署やアメダスで使用されており、WMOにより地上1.25m~2.0mの高さで観測するよう勧告している。 |
気温変化
気温は、以下を契機に変化をもたらす。
用語 | 説明 |
---|---|
放射平衡 | 熱収支で学んだ短波放射・長波放射によるもの。 |
水平温度移流 | 暖気が移流すれば暖気移流、寒気が移流すれば寒気移流 |
非断熱過程による加熱や冷却 | 水蒸気の凝結や水滴の蒸発ならびに雪片の融解や昇華など |
地形効果 | 地球大気の運動で学んだフェーン現象や局地風など |
✔観測対象:風
定義
風に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
風向 | 風が吹いてくる方位。多くの場合は16方位を用いるが、天気予報では8方位、国際通報式や気象官署では36方位を用いる。 |
風速 | 0.1m/s単位で観測。 |
風圧 | 風速の2乗に比例して大きくなるため、10m/sと20m/sでは4倍の差がある。風を受ける面の形状にも依存し、凹面であれば大きくなり、凸面であれば小さくなる。 |
平均風速 | 10分間の平均風速 |
瞬間風速 | 3秒間(0.25秒毎の12個の値)の平均風速 |
最大風速 | 10分間の平均風速のうち、最も大きい値 |
最大瞬間風速 | 瞬間風速の最大値 |
突風率 | 最大瞬間風速と平均風速の比 |
なお、飛行場については10分間ではなく2分間の計測値を採用している。
観測方法
風の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
風杯型風速計 | お椀型のプロペラの回転速度によって風速を観測する。風速が非常に強くなると観測誤差が無視できなくなるため、およそ60m/sが観測最大値。 |
風車型風速計 | 風車型のプロペラであるため鉛直成分を持つ風の影響を受けにくい。瞬時の風向変化には対応しづらいため、その場合は実測値より小さく観測してしまう可能性がある。 |
超音波式風速計 | 音波の伝搬速度が風速による変化を利用。風速が弱い場合や気流の乱れ率を計測するのに適している。強風観測には不向き。 |
風の強さ
風の強さは、以下で定義される。
用語 | 説明 |
---|---|
ビューフォート風力階級 | 地物・海波などの動きで風速を0~12の13階級に分類。 |
藤田スケール | 竜巻の強さを評定するための尺度でありF0~F5の6階級に分類。 |
また、気象庁資料によると、10分間平均風速にて以下に分類される。
分類 | 説明 |
---|---|
10~15m/s未満 | やや強い風|風に向かって歩きにくい。傘が差せない。トタン板が飛び始める。 |
15~20m/s未満 | 強い風=強風|風に向かって歩けない。転倒する人も出る。ビニールハウスが壊れ始める。 |
20~25m/s未満 | 非常に強い風=暴風|鋼製シャッターが壊れ始める。 |
25~30m/s未満 | 非常に強い風=暴風|ブロック塀が壊れ始める。 |
30m/s~ | 猛烈な風=暴風|樹木が根こそぎ倒れ始める。木造住宅が壊れ始める。 |
なお、「突風」については明確な風速の定義はない。 寒冷前線や竜巻、ダウンバーストやつむじ風などにより一時的に強まる風を「突風」と呼ぶが、 平均的に風が強い状況(台風や冬型気圧配置、発達した低気圧など)で吹く一時的に強くなる風は「突風」とは呼ばない。
✔観測対象:降水量
定義
降水量に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
雨 | 直径0.5mm以上の水滴からなる降水 |
雪 | 水蒸気が昇華して生じた氷晶が、更に水蒸気の昇華拡散作用で成長して降る現象 |
霰 | 直径5mm未満の氷でできた固形粒子 |
雹 | 直径5mm以上の氷でできた固形粒子 |
降水量 | 降った雨や雪などがどこにも流れずに溜まり、その水深をmmで計測したもの |
降水強度 | 単位時間当たり何mmの降水量なのか |
観測方法
降水量の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
転倒升型雨量計 | アメダスや気象官署で広く使われている。受水口から漏斗を通じて転倒升に流れ込む事で0.5mm単位での観測が可能。雪は電熱ヒーターで融かして水に変える。 |
雪尺 | cm単位の目盛がついた木製の角柱。太陽放射を受けにくくするために白く塗られている。 |
超音波式積雪計 | L字型のポール上部から超音波を地表面に射出し、戻ってくる時間で高さを計測。 |
誤差
降水量は、以下が起因となり誤差が生じる事がある。
要因 | 説明 |
---|---|
風 | 強いほど影響が大きい |
受水口・貯水器の面を濡らす現象 | 少ない雨量では影響が大きい |
受水口からの蒸発 | 小雨や少ない雨量時、乾燥時に影響が大きい |
✔観測対象:湿度・露点
定義
湿度・露点に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
乾燥空気 | 水蒸気を含まない気体。 下降気流や下降気流成分をもつ大気運動で生成される。 |
湿潤空気 | 水蒸気を含まれる気体。 水滴が多量に蒸発するとき、湿潤な空気の水平移流があるとき、水蒸気を含む空気が上昇気流によって断熱膨張による冷却が起きるときに生成される。 |
仮温度 | ある湿潤空気に対して、同圧⼒・同密度をもつ乾燥空気の温度。 |
露点温度 | 空気が飽和する時の気温。単位は°C。 |
霜点温度 | 氷点下において氷に対して飽和する気温。 |
水蒸気圧(蒸気圧) | 空気に含まれる水蒸気が多いと値も大きくなる。単位はhPa。 |
観測方法
湿度・露点の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
電気式湿度計 | セラミックや高分子化合物が周囲の湿度変化に応じて水分子を集めたり解放したり電気抵抗の変化を測定して観測。 |
乾湿計(乾湿球湿度計・乾湿温度計) | 相対湿度が低く乾燥しているほど乾球温度計と湿球温度計の温度差が大きくなる事を利用。両者の温度差が同じでも気温が違えば相対湿度も変わる。百葉箱などに用いられる。 |
塩化リチウム露点計 | 塩化リチウムが持つ吸湿性を利用。露点温度の観測に用いられる。地上1.5mに設置され、0.15m/sの通風をする(この風速をある程度超えると誤差が生じやすくなる) |
✔観測対象:気圧
定義
気圧に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
気圧 | 地表面上に存在する全ての空気の質量に重力が働き、地表面などを押す力。海抜0mを1気圧=1013.3hPaとする。 |
- 捕捉
- 地球大気の組成は、窒素:酸素:アルゴン=78:21:1とほぼ安定
- 地球大気全体の質量の99.9%は対流圏と成層圏に存在する
観測方法
気圧の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
水銀気圧計 | 温度が0°Cの時に正しい気圧を示すように作られているため温度補正が必要。緯度による重力変化があるため重力補正が必要。 |
アネロイド気圧計 | ガラス面を2,3回叩いて気圧を読取る。水銀気圧計より観測精度は劣る。 |
電気式気圧計 | 気圧による電気容量が変化する素子を用いて電気的な変化から測定。 |
天気図
気圧は、天気図としては以下で表される。
用語 | 説明 |
---|---|
等圧線 | 気圧の等しい地点で結んで書いた線 |
リッジ | 気圧の山 |
トラフ | 気圧の谷 |
補正
気圧は、以下の方式により補正される。(観測地点の高度差異を埋めるため)
用語 | 説明 |
---|---|
現地気圧 | 観測所で測定された気圧。 |
海面気圧 | 海抜0mに更生された気圧。「静力学平衡の式」と「気体の状態方程式」を用いる。 |
「静力学平衡の式」と「気体の状態方程式」については、後日記載。
✔観測対象:日照
定義
日照に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
直達日射 | 太陽から直接に平行線で受ける光 |
散乱光 | 太陽以外の方向から太陽光が空気分子などにより散乱して入る光 |
全天日射 | 直達日射+散乱光 |
混濁係数 | 大気中に浮遊している微粒子量を知る目安。火山噴火などにより係数が上がり、直達日射が減少&散乱光が増加し、地上の平均温度が下がる(=日傘効果) |
観測方法
日照の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
全天日射計 | 水平面に設置された凸状の半球面で受けた単位面積当たりの放射強度を計測。気象官署で用いられる。 |
太陽追尾式日照計 | 全天日射計と違い、太陽を自動で追尾する。気象官署で用いられる。 |
回転式日照計 | アメダスで用いられる。 |
太陽電池式日照計 | アメダスで用いられる。 |
✔観測対象:視程
定義
視程に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
視程 | 観測地点から水平方向に360度見通して、最も見通しが悪い方位における視程距離。 |
卓越視程 | 航空関連で用いられる。360度のうち180度以上の代表的な指定の平均値をとる。 |
視程階級 | 視程距離から0~9の10階級がある。 |
観測方法
視程の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
肉眼 | 肉眼。 |
観測対象
視程の観測対象は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
霧 | 大気中に微小な水滴が浮遊し、水平視程が1km未満の状態。 |
濃霧 | 視程が陸上でおよそ100m以上、海上で500m以下の霧。 |
もや | 微小な浮遊水滴や湿った微粒子により、視程が1km~10kmの状態。 |
煙霧 | 乾いた微粒子により視程が10km未満となっている状態。黄砂もこれに該当する。 |
風塵 | 強風によって地表面上の塵や埃などが空気中に舞い上がり、視程が一時的に遮られる現象。黄砂はこれに該当しない。 |
砂塵 | 強風によって塵または砂が空高く吹き上げられ、視程が1km未満の状態。黄砂はこれに該当しない。 |
スモッグ | 大気汚染による煙霧。 |
PM2.5 | 大気中に浮遊している2.5μm以下の粒子物質。 |
✔観測対象:雲
以前のエントリーで記載したため割愛。
✔観測対象:大気現象・天気
種類
大気現象には、以下の種類がある。
- 大気水象
- 大気塵象
- 大気光象
- 大気電気象
この大気現象に付随し、以下の天気が観測される。(詳細は長くなるので割愛)
✔観測対象:海上
定義
海上に関する定義は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
波高 | 波の谷から峰までの高さ |
卓越周期 | ある海上の地点で波が来て、次の波が来るまでの平均的な時間 |
有義波高 | 100以上の連続的に観測した波高データを降順にした上位3割の平均波高 |
風浪 | 風によって直接生じる波 |
うねり | 遠方での波浪が伝わってきたもの |
卓越波高 | 波が平均的にやってくる方位(波の進行方向の真逆) |
大しけ | 強い風で海上が荒れること。は波高が4~6mだと「しけ」、6~9mだと「大しけ」、9m~だと「猛烈なしけ」 |
✔観測対象:アメダス(AMeDAS)
正式名称
AMeDAS
= Automated Meteorological Data Acquisition System
= 自動気象データ収集システム
観測対象
Meteorological Data
= 降水量、風向、風速、気温、日照時間、積雪深
- 全国約1300地点で「降水量」の観測が行われており、うち約840地点で「風向」「風速」「気温」「日照時間」の観測も行っている
- 降水量の場合は全国の17km四方に1地点、それ以外は21km四方に1地点の割合で設備されている
- アメダスが無人観測点が多いが、156ヶ所は気象官署内に設置されている(アメダスと気象官署で観測統計手法が微妙に異なる)
🎈高層気象観測
- 高層気象観測とは、地上~約30kmまでの大気の状態を観測する事を指す。
- 以前のエントリーの『大気の鉛直構造』で記載した通り、高度30kmまでとは対流圏~成層圏を示す。
- 成層圏にはオゾン層も存在するため、オゾン層も観測する事ができる。
観測方法
気球に観測器を吊るして、観測値を無線で地上に送信する事で観測する。 装置・手法としては、以下のようなものが挙げられる。
用語 | 説明 |
---|---|
レーウィン | 風向・風速を計測 |
ラジオゾンデ | 気圧・気温・湿度を計測 |
レーウィンゾンデ | レーウィン+ラジオゾンデ |
オゾンゾンデ(*1) | オゾン濃度を計測 |
ちなみに、 - 『ラジオ(radio)』は、フランス語や英語などで「無線電波」 - 『ゾンデ(sonde)』は、ドイツ語で「探針」 - 『レーウィン(rawin)』は、「radio+wind」の合成語
レーウィンゾンデによって、以下が観測される。
用語 | 説明 |
---|---|
気温 | 0.1°C単位で観測される。上昇するほど太陽放射の加熱影響を強く受けるため日射補正を行う(夜間は太陽放射がないので補正は行わない)。 |
湿度 | 相対湿度で観測するが、観測結果は湿数(気温°Cと露点温度°Cの差)として報告される。 |
気圧 | 0.1hPa単位で観測される。ラジオゾンデの中には、気圧計を持たずに、GPSを用いて3次元的に位置を解析し、高度から気圧を求める事もある。 |
風向風速 | 風向は1度単位、風速は1m/s単位で観測。GPSにより水平移動距離を求め、経過時間で割って風速を求める。 |
高度 | 現在はほとんどGPSゾンデによる観測が行われている。 |
高層天気図の作り方
- 毎日2回定時に、世界各地の観測所からレーウィンゾンデを打ち上げる
- 毎分300~400mの速さで上昇し、逐次データを送信する
- 「高層観測データ」と「地上観測データ」を基に、以下を算出
- 静水圧平衡の式を用いて「気圧」「気温」「温度」の高度分布を算出
- 観測地点のズレから「風向」「風速」を算出
- これらを地図上に記入する事で「高層天気図」ができる(等高度線を引く)
高層天気図では「エマグラム」を用いる。 「エマグラム」は横軸に気温を常数目盛で、縦軸に気圧を対数目盛でとったグラフ上に、ある地点の上空の気圧と気温および露点の関係をプロットしたグラフ。
*1: オゾンゾンデ
オゾン濃度の観測方法は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
ドブソン分光光度計 | 天空からくる紫外光をプリズムによって分光し、オゾンに強く吸収される波長の光と比較的吸収が少ない波長の光の強度比を測定。南極の昭和基地で用いられる。 |
ブリューワー分光光度計 | 回折格子を用いて太陽光を分光し、光電子増倍管でその光の粒子数を目的の波長毎に測定。札幌・つくば・那覇で用いられる。 |
上記観測方法を用いて、以下を観測する。
- 太陽の直接日光
- 天頂光
- 月光
📡気象レーダー観測
レーダー
= radar
= radio detection and ranging
= 電波検出と測距(訳:Google翻訳)
つまり、電波を用いて対象物までの距離を図る観測方法。
✔気象レーダー
気象レーダーでは「降水強度」「雨雲までの距離」を測る。
原理
- アンテナから電波を発射(マイクロ波、パルス間隔3.85ms)
- 降水粒子(雲内の雨粒や氷粒)に当たり、後方散乱
- 戻ってくる受信電力から、降水強度を測る(レーダー方程式に基づき計算)
- 戻ってくる経過時間から、雨雲までの距離を測る(レーダー方程式に基づき計算)
メリット
- リアルタイム性が高い
デメリット
- シャドウ域
- グランドエコー
- シークラッター
- エンゼルエコー
✔X-MP気象レーダー(X-band Multi-Paramater Radar)
一般的な気象レーダーでは、降水粒子の空間的な数密度の変化よりも、降水粒子の直径の相違の方が圧倒的に大きいという物理的制約がある。 つまり、降水時における降水粒子の大きさの相違が、降水強度の観測誤差を生んでしまう。
そこで「X-MP気象レーダー」ではXバンドの短い波長の電波を利用して観測を行う。 しかし、波長が短いと空気分子による散乱も強まるため、観測エリアが狭くなる制約もある。
原理
垂直波と水平波による偏波間の位相比較(周期比較)を解析する。
✔ドップラーレーダー
ドップラーレーダーでは「降水速度」を測る。
原理
- ドップラー効果の利用により、降水速度が分かる
- 降水速度が分かれば、強い積乱雲の中の空気の動きが測定できる
✔ウィンドプロファイラ
ウィンドプロファイラでは「風」を測る。 ドップラー効果を応用した観測。
原理
- 地上から上空に電波を発射
- 上空から戻ってくる周波数の変化を解析
地上から上空に向けて電波を発射 大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波を受信 受信データを処理することで、上空の風向・風速を測定 地上に戻ってきた電波は、散乱した大気の流れに応じて周波数が変化しているので(ドップラー効果という)、発射した電波の周波数と受信した電波の周波数の違いから大気の動きがわかります。実際の観測では上空の5方向に電波を発射しているので、風の立体的な流れがわかります。
🛰気象衛星観測
可視光線の場合、雲の分布や地表面の状態が観察可能。
しかし、新月の闇夜は何も見えない。
そこで、赤外線帯域を使って観測可能にしている。
気象衛星の種類
気象衛星の種類は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
静止気象衛星 | 地球の自転による各速度と同じ速度で周回しているため、地上からは静止しているように見える。 約36000km付近を周回。 |
極軌道衛星 | 100分周期で南北を周回する。地球は自転しているので、戻ってきた時には別の地域が見えている。 約800~1000km付近を周回。 |
観測される画像
気象衛星によって観測される画像は、以下の通り。
用語 | 説明 |
---|---|
可視画像 | 明るいほど厚い雲 |
赤外画像 | 明るいほど雲頂高度は上層 |
水蒸気画像 | 明るいほど水蒸気量は多い |
😶まとめ
ただ列挙しただけなのに数日かかった。疲れた。
次回は「さまざまな気象予報」についてまとめていきたい。
一通りまとめ終わった後は、気象業務支援センターが掲載してくれている過去問題を解いていき、知識の精緻化をしていく予定。 今まではデジタルでまとめてたので、過去問勉強からはアナログでまとめて脳に入れていく予定。
『一般気象学』から学ぶ「降水過程」と「雲の分類」について
前回に続き一般気象学のまとめ。
前回は「どのように地球大気は運動しているのか」についてまとめたが、
今回は「どのような大気運動により雲が形成されて降水に至るのか」についてまとめていく。
😶前提知識
降水過程と雲の分類を学ぶにあたり、まず重要になってくるのは【物質の相変化】である。
- 物質は「気体」「液体」「固体」の3つの状態を持つ(厳密には「プラズマ」もあるがここでは扱わない)
- H2Oの場合「気体=水蒸気」「液体=水」「固体=氷」となる
- 温度の変化に伴って、この状態が変化する事を『相変化』という
行→列 | 気体 | 液体 | 固体 |
---|---|---|---|
気体 | x | 凝結 | 昇華 |
液体 | 蒸発 | x | 凝固 |
固体 | 昇華 | 融解 | x |
次に、どんな大気の動きにより雲が形成されるのかを記載する。
- 地上から水蒸気が持ち上がって、乾燥断熱減率により温度が下がる
- LCL(持上凝結高度)まで達して、やがて飽和し、雲が形成され始める(雲底高度)
- 更に水蒸気が持ち上げられて、湿潤断熱減率により温度が下がる
- LFC(自由対流高度)まで達して、周辺と温度が同じになる(雲頂高度)
つまり、「地上に存在した気体が、上昇して温度が下がるにつれて液体・固体となり、雲が形成される」という事になる。
さて、こうして形成された雲で何が起きる事で降水するのだろうか。
☔降水過程
降水過程を学ぶにあたっての流れは、概ね以下の通り。
- 上昇過程:水蒸気を含む大気の上昇
- 凝結過程:水蒸気の凝結による雲粒の形成
- 併合過程:雲粒の併合による雨粒・氷晶の形成
- 降水過程:雨粒・氷晶の降水
✔上昇過程
降水するためには、まずは上昇しないといけない。本項ではどのように空気塊が上昇していくのかを記載する。
- 以前のエントリーの「地球の成り立ち」で記載した通り、地球大気には水蒸気を含む空気塊が存在する
- 空気塊は、太陽日射などで暖められると密度が小さくなり、密度が小さくなると上昇を始める
- もしくは、空気塊は上昇気流により上昇する
- 以前のエントリーの「大気の鉛直構造」で記載した『対流圏』では、高度が上がるにつれて気圧が下がる。(約5km上昇するごとに気圧は半減する。地上が約1013hPaなので地上5km付近は約540hPa、地上10km付近は更に半分の約250hPa)https://news.yahoo.co.jp/byline/nyomurayo/20170112-00066487/
- 断熱的に上昇する空気塊は、周囲の気圧が低くなると断熱膨張を始める
- 断熱膨張は、自身の内部エネルギーを消費し、自身の温度を下げていく
- この時の温度が下がる割合を「乾燥断熱減率」で表す。(断熱的に1km上昇すると温度は約10K下がる)
✔凝結過程
上昇した水蒸気が、どのようにして凝結・昇華するのかを記載する。
不純物を含まない空気
- 空気塊の温度を下がっていくと、その温度に応じて飽和水蒸気圧も下がる
- 飽和水蒸気圧が下がると、相対湿度が増加し、遂に100%に達する
- 更に温度を下げていくと、余分な水蒸気は過飽和状態となり凝結する
- 氷点以上の場合は凝結核となり、-33度~-41度になると自発的に凍結し氷晶核(*1)となる
・・・・・と、ここまでは塵やほこりなどを含まない「不純物を含まない空気」の話。 「不純物を含まない空気」の場合、過飽和度が高くなければ平衡状態として存在できず、水の表面張力が邪魔をしてなかなか水滴が作られない。 (自然界において、水分子が偶然の衝突を繰り返して半径0.1μmの水滴を作り出す確率は極めて低い)
エアロゾル
*1: 氷晶核
氷晶核の種類は、以下の通り。
名称 | 説明 |
---|---|
昇華核 | 水蒸気が直接昇華した核 |
凍結核 | 水蒸気が一旦過冷却の微水滴になり凍結した核 |
凝結凍結核 | 凝結核+凍結核 |
接触凍結核 | 過冷却の水滴に衝突し、その衝撃で凍結させる核 |
エアロゾルが氷晶核として働く温度は、以下の通り。 |エアロゾル|温度| |:--|:--| |ヨウ化銀|-4度| |カオリナイト|-9度| |火山灰|-13度| |黄砂|-12~-15度|
✔併合過程
凝結・昇華した核が、どのようにして大きく重く成長していくのかを記載する。
雨粒の成長
- 雲粒は0.01mm程度だが、雨粒は1mm程度であるため、容積としては約100万倍となる
- 雨粒は地球引力により落下する
- 落下速度は、「物体が動く重力」と「逆方向に働く抵抗力」で釣り合い、『終端速度』として一定となる
- 大きな水滴は小さな水滴より落下速度が大きく、大きな水滴が小さな水滴と衝突して、併合し、大きくなる
- 大きな水滴は表面張力が弱くなるため、小さな水滴に当たると分裂する傾向にある。そのため、8mm以上の水滴は観測されない
氷粒子の成長
以下3つの異なる過程により成長する。
水蒸気の昇華凝結
- 水蒸気は大気中を氷晶に向かって拡散し、氷晶に直接くっついて(昇華して)氷晶を成長させる
- 氷粒は様々な形(*1)をしていて、必ずしも球体ではなく複雑になる
- 過冷却雲中に生成した氷粒子は過飽和状態にあるため、水滴の凝結過程のよりもずっと速く成長する
*1: 晶癖
雪の結晶は「細長く伸びた柱状」「薄く広がった板状」に分類され、これを『晶癖』と呼ぶ。 どのような晶癖になるかは、その結晶が成長している時の「温度×過飽和度」による。
- 0~-4度:板状
- -4~-10度:柱状
- -10~-22度:板状(過飽和度が増すにつれ角柱→骸晶厚角板→扇形角板となる)
- -22度~:柱状
凝集
- 氷粒子の落下速度が異なる事により、衝突し、付着して、氷粒子の質量が増加する事がある。
- 昇華凝結で成長した雪結晶同士が衝突してくっつきあったものを「雪片」と呼ぶ。
- 温度が高くなるにつれて付着しあう割合も高くなるため、-5度付近では大きな雪片(ぼたん雪)も観測される。
過冷却雲粒の補足(ライミング)
✔降水過程
本エントリーの上昇過程で記載した通り、上昇気流があるため水滴・氷晶はなかなか落下してこない。 上昇気流を上回る落下速度を持っていると、地上に落下してくる。
冷たい雨
- 上空の雲の中で成長した氷粒子(あられや雪片など)は、氷点より高い温度の空気中を落下してくる途中で融解する(流れ星が大気圏で消滅するように)
- 氷粒子が融解して雨粒となった状態で地上に降ってくる状態を「冷たい雨」という。(中緯度帯の日本においては約80%が冷たい雨と言われている)
- 融解速度は、粒子の「顕熱(周辺空気から熱伝導で受け取る熱)」と「潜熱(昇華蒸発する際に粒子から奪う熱)」の大小関係により決まる。
- 前者が大きければ融解して雨粒となり、後者が大きければ融解せずあられや雪片のまま落下する。(空気が乾燥していると後者が優勢)
暖かい雨
氷粒子が融解する事による降水ではなく、凝結した雲粒が、併合して雨粒となり、そのまま降水してくる雨を「暖かい雨」という。
☁雲の分類
✔基本4種
まず、国際雲分類表から、基本4種に分けられる。
日本語名 | ラテン語名 | 説明 |
---|---|---|
積雲 | Cumulus | 盛り上がったもの、積み重なったもの |
層雲 | Straus | 層状をしている |
巻雲 | Cirrus | 髪の毛の一部 |
乱雲 | Nimbus | 降水を伴う |
✔運形10種
次に、基本4種を組合わせて、主に雲形10種に分けられる。
大分類 | 中分類 | 名称 | 記号 | 高度 | 温度 |
---|---|---|---|---|---|
層状雲 | 上層雲 | 巻雲 | Ci | 5~13㎞ | -25度~ |
層状雲 | 上層雲 | 巻積雲 | Cc | 5~13㎞ | -25度~ |
層状雲 | 上層雲 | 巻層雲 | Cs | 5~13㎞ | -25度~ |
層状雲 | 中層雲 | 高積雲 | As | 2~7㎞(上層に達する事もある) | 0~-25度 |
層状雲 | 中層雲 | 高層雲 | Ac | 2~7㎞ | 0~-25度 |
層状雲 | 下層雲 | 層雲 | Sc | ~2㎞ | ~-5度 |
層状雲 | 下層雲 | 層積雲 | St | ~2㎞ | ~-5度 |
層状雲 | 下層雲 | 乱層雲 | Ns | 雲底は下層だが、雲頂は中~上層に達する | ? |
対流雲 | - | 積雲 | Cu | 0.6~6km | ? |
対流雲 | - | 積乱雲 | Cb | 雲底は下層だが、雲頂は上層に達する | 雲頂は-50度 |
✔霧の分類
気象学における霧の定義は「直径数10μmの水滴・氷晶が大気中に浮かんでいる事が原因となり、地表面付近で水平方向の視程が1km未満になる現象」
霧は地上に発生した雲であり、以下に分類される。
- 放射霧
- 赤外放射により地表が冷える事で発生する霧
- 例:晴れた夜の明け方など
- 移流霧
- 蒸気霧
- 水蒸気を含んだ暖かい空気が、周りの冷たい空気と混同して飽和に達した霧
- 例:寒い日に吐く息、温泉の湯けむり
- 前線霧
- 暖かい水滴が蒸発し、空気が過飽和となり、余分な水蒸気が霧粒となる
- 例:閉めきった風呂場でのシャワー
- 上昇霧
- 空気が上昇し、断熱膨張のため空気の温度が下がし、露点に達する事で生じる
- 例:山腹に沿って上昇する雲。山腹に住む人にとっては霧だが、地上に住む人にとっては雲。
😶まとめ
前回のエントリーでは以下のような事を記載したが、これらの意味が本エントリーにより理解できたかと思う。
- 積乱雲は、成長期は上昇流で、成熟期は上昇流と下降流が共存し、衰退期は上昇流が消滅する
- 積乱雲は、雲粒・雨粒・氷粒子ができている
✔次回以降の予定
一般気象学をまとめ始めて今回で第4回になる。 最初に「まとめる予定だ」と話した内容について、もう一度整理する。
- 力学
- 熱力学
地球大気の鉛直構造(第1回)地球大気の熱収支(第2回)地球大気の運動(第3回)- 地球大気の観測
降水過程(第4回)- 気象予報
- さまざまな気象現象
- さまざまな気象災害
- さまざまな気象情報
次回は「地球大気の観測」あたりについて調べようかな。
力学と熱力学は、もう少し深掘りしてからまとめていきたい・・・難しい・・・・・。
『一般気象学』から学ぶ「地球大気の運動」について
前回に続き一般気象学のまとめ。
これまで「宇宙や地球がどのように誕生し、地球はどのような大気構造になっているか、その大気の熱収支はどうなっているか」というところをまとめてきた。
今回は「地球大気がどのように運動しているのか」についてまとめていく。
地球は大気に覆われていて、公転や自転、力学や熱力学によって絶えず大気は運動・循環している。 地球規模の大きな運動から、つむじ風程度の小さな運動までまとめる。
😶前提知識
熱の伝達は、以下3形態にて行われる。
伝達形態 | 説明 |
---|---|
伝導 | 「物質」を媒介とした熱の移動(例:紅茶の熱がスプーンに伝わる) |
放射 | 「電磁波」により熱が伝達される(伝導との違い:物質を介さない、なので真空でも伝わる) |
対流 | 「流体」が高温の物質を低温に移動させる(伝導との違い:熱と共に物質も移動させる) |
大気は流体であり、流体が遠心力や温度差により掻き回されるため、大気の運動が引き起こされる。
🌎大気循環
✔南北方向の循環
まず、「温度勾配」は南北方向に大きい事は我々の経験上理解している。赤道付近は暖かいし、極地方付近は寒い。 熱力学の第2法則「熱は高い方から低い方に伝わる」の通り、大気は南北方向に循環する。
次に、地球は「自転」している。自転によりコリオリ力が生じる。 これにより対流は3つのセルに別れてしまう。(参考:大気と海の科学)
名称 | 説明 |
---|---|
ハドレー循環 | 赤道付近で上昇。南北30度付近で下降。 |
フェレル循環 | 緯度50~60度付近で上昇。緯度30度付近で下降。 |
極循環 | 中緯度付近で上昇。極地方付近で下降。 |
✔東西方向の循環
南北方向の循環で説明した通り、温度勾配と自転によって東西方向の循環も生じる。
名称 | 説明 |
---|---|
貿易風 | 赤道付近。北半球では北東風、南半球では南東風。 |
偏西風 | 中緯度。北半球では南西風、南半球では北西風。 |
極偏東風 | 極地方。北半球では北東風、南半球では南東風。 |
ウォーカー循環 | エルニーニョ・ラニーニャによる赤道付近での東西方向の大気循環。 |
✔テレコネクション
温度勾配ではなく、気圧勾配により生じる大気現象。
離れた2つ以上の地域で気圧がシーソーのように伴って変化する現象。 エルニーニョ・南方振動もこれに該当する。(参考:Wikipedia)
✔マクロスケール(水平スケール2000km~)
大気運動の水平スケールが2000km以上であり、約2000km~10000kmまでを「総観規模」、10000km 以上を「惑星規模」と呼ぶ。
大気現象としては、「テレコネクション」「モンスーン」「プラネタリー波」「傾圧不安定波」などが該当する。
プラネタリー波・モンスーン・傾圧不安定波
どれも、発生原理としては海陸風と同じであり、大陸と海洋の温度差によって生じる。(参考:色と形で気象予報士!)
名称 | 説明 |
---|---|
プラネタリー波 | ヒマラヤ山脈、ロッキー山脈などの大規模な山岳(これが原因で成層圏で突然昇温が発生する) |
モンスーン | ヒマラヤ山脈とチベット高原 |
傾圧不安定波 | 南北方向の気温の差 |
✔メソスケール(水平スケール2km~2000km)
大気運動の水平スケールが2km~2000kmであり、「中規模」とも呼ばれる。
大気現象としては、「ベナール型対流」「積乱雲・メソ対流系」「台風」「局地風(海陸風・山谷風)」「フェーン現象」などが該当する。
ベナール型対流系
下面が暖められ、上面が冷やされ、層の両面に一様な温度差が現れた時、小さな対流がたくさん現れる現象。
冬型の気圧配置の際に現れる筋状の雲があるが、あれはベナール型対流によって発生している。 (暖かい対馬海流と、冷たいシベリア気団により、下面と上面に温度差が発生。)
積乱雲
「降水セル」「降水細胞」とも呼ぶ。
- 成長期(発達期)
- 雲の温度は周りより高く、全て上昇流
- 雲粒・雨粒・氷粒子ができるが、上昇流が強いので地上に落下してこない
- 成熟期(最盛期)
- 合図は、下降流の始まり(大きな雨粒や霰などが、周囲の空気を一気に引きずりおろす)
- 上昇流と下降流が共存しているが、下降流が強くなり、雲底に冷気が溜まる(冷気プール)
- 局所的高気圧となり、冷気外出流やガストフロント(*1)が発生
- 減衰期(消滅期)
- 合図は、上昇流の消滅(つまり下降流のみとなり降水が続く)
*1: ガストフロント
- 形成期
- 成熟期の積乱雲の雲底から冷たい下降流が降りてくる(ダウンバースト)
- 成熟初期
- 下降流が勢いよく地表面にぶつかり水平に広がっていく
- 成熟終期
- 減衰期の積乱雲から遠ざかる
- 衰退期
- 積乱雲がなくなっても遠くまで伝わることがある(この冷気が他の暖気を押し上げて新たな積乱雲を産む=自己増殖)
メソ対流系
複数個の降水セルが同時に存在し、メソスケール対流系を構成。
- 団塊状メソ対流系
- 線状メソ対流系
- 比較的速く動くものを「スコールライン」、遅く動くものを「降水バンド」と呼ぶ
- 空気は中層から上層にかけてゆっくり上昇し、後方に向かいながら層状性の雲を作る
- スコールラインはあまり日本では見られず、熱帯やアメリカで見かける
- 「ビッグビルディング」もある。次々に新しいセルが作られ、風下側に流される
熱帯低気圧・台風・ハリケーン・サイクロン
- 名称と定義
- エネルギー源
- 台風の特徴
- 台風の形成
- 渦運動
- 地表摩擦による収束
- 大気境界層上面を通る上昇流
- 積乱雲群の発達
- 凝結による潜熱の放出
- 中心の高温化・気圧の低下
- 渦運動を強化させ、最初に戻る
- 中心の高温化・気圧の低下
- 凝結による潜熱の放出
- 積乱雲群の発達
- 大気境界層上面を通る上昇流
- 地表摩擦による収束
- 渦運動
✔ミクロスケール(水平スケール~2km)
大気運動の水平スケールが~2kmであり、「小規模」とも呼ばれる。
大気現象としては、「竜巻」「つむじ風」などが該当する。
☁️気団と前線
「気団」とは、大気が長い間停滞していると生じる特有の性質を持った空気塊。
「前線」とは、2つ以上の気団の境界線。
- 気団の分類
- 温度による分類
- 熱帯気団(Tropical)
- 寒帯気団(Polar)
- 極気団 (Arctic)
- 湿度による分類
- 大陸性気団(Continental)
- 海洋性気団(Maritime)
- 温度による分類
- 気団の種類(日本付近)
- 季節による勢力の違い(日本の場合)
- 前線の一生
- 形成過程
- 水平面上で温度傾度が増大すると前線が形成される
- 収束を伴ったり、伴わなくても変形場があれば形成される
- 消滅過程
- 水平面上で温度傾度が減少すると前線が消滅する
- 形成過程
- 補足
- 低気圧には前線ができるが、高気圧には前線はできない。
- 低気圧では、周囲から暖気と寒気が集まるため境目がはっきりするため。
- 高気圧では、上空に集められた空気が緩やかに吹き降りるので境目がはっきりしないため。
- 参考:Yahoo!知恵袋
- 低気圧には前線ができるが、高気圧には前線はできない。
😶まとめ
前回は「放射」についてまとめたが、今回は「対流」がメインであった。
大規模な現象から小規模な現象まで、幅広い大気現象が我々の生活に影響を与えている事が分かる。 日本周辺に属する気団や、亜熱帯地帯で発生するメソスケールな現象。それらを運んでくるマクロスケールな現象など。
次回は「降水過程」についてまとめようかな。
『一般気象学』から学ぶ「地球の熱収支」について
前回に続き一般気象学のまとめ。
今回は熱収支についてまとめる。
💰地球大気の熱収支
前提
地球のエネルギー99.97%は「太陽放射」により賄われている。 残り0.03%は火山活動などによる「地熱」や、月の引力などの「潮汐」などもあるが、数値から見て微々たるものである事が分かる。
太陽定数
地球大気の上端で太陽からの放射線に直角な方向の単位面積が単位時間に受ける放射エネルギーを「太陽定数」と呼ぶ。 太陽定数は以下の式で表される。
1.37×10^3Jms
地球のアルベド
鏡を見れば分かるように、入射があれば反射もする。
地球における太陽放射の入射量に対する反射量の割合を「地球のアルベド」という。 反射量は約30%であり、つまり太陽放射の30%は宇宙に反射されている。
放射
前述した通り、太陽からの放射もあれば、地球の反射による放射もある。前者を「太陽放射」、後者を「地球放射」という。
太陽放射
最大放射強度
太陽放射の最大放射強度は0.475μmなので、「短波放射」とも呼ばれる。
吸収
「地球のアルベド」で述べた通り、30%を反射するため、70%は地球上で吸収される。
- 地球の大気上端だと、黒体放射スペクトルと近似
- 0.31μmより短い紫外線は、前回エントリーの「地球大気の鉛直構造」で述べた通り、熱圏や成層圏で吸収される
- 0.77μmより長い赤外線は、水蒸気により吸収される
- 2~5μmあたりは、二酸化炭素も吸収に寄与する
- 全体の約49%は地面・海面にて吸収される
地球放射
最大放射強度
地球放射の最大放射強度は11μmなので、「長波放射」とも呼ばれる
吸収
前項で述べた通り、約70%が地球上で吸収される。これを再放射する。
- 0.77μmより長い赤外線は、水蒸気により吸収される
- 2~5μmあたりは、二酸化炭素も吸収に寄与する
- 8~12μmあたりは、大気による吸収が弱い
- 窓領域と呼ばれる。地球大気外に到達するためほぼ黒体放射と言える。
- これを活用し、輝度・温度を測る事で、人工衛星から海面温度を測定することができる
- 窓領域と呼ばれる。地球大気外に到達するためほぼ黒体放射と言える。
- 地面・水面に潜熱するエネルギーもあるが、大気の移動や蒸発によりやがて大気や雲に移り、再放射される
散乱
熱ではなく光。電磁波が空気分子やエアロゾルにぶつかる事で生じる、二次的な電磁波を「散乱」と呼ぶ。
レイリー散乱
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径より非常に大きい場合(気体分子など)の散乱。
- 散乱光:日中晴れた"空"が青く見える、日出前や日没後の"空"が赤く見える
- 直接光:日出や日没の"太陽"が赤く見える
ミー散乱
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径と同程度(エアロゾルなど)の場合の散乱。
- 太陽光と同じ白色光(雲が白く見える。空気が汚れている日の空。)
幾何光学
入射してくる電磁波の波長が、粒子の半径より非常に小さい場合の散乱。
- 虹はこれにより発生する
まとめ
このエネルギー収支と、力学や熱力学を使う事で、どのような気象現象が発生するのかというのが見えてくる、はず。
関係ないけど、別の本を読んでる時に「17,18世紀に確立したニュートン力学は時間を考慮していないため可逆的である。19世紀に熱力学が登場し時間を考慮する必要が出てきた。ニュートン力学(古典力学)だけでは物理現象の説明はできない。」みたいな記述があって「へぇ~~~」となった(急激な語彙力の低下)
『一般気象学』から学ぶ「地球の成り立ち」と「大気の鉛直構造」について
先日投稿した『「天文学入門 星とは何か」を読んだけどよく分からなかったので調べ直した。』。
宇宙という大きなスケールの話をまとめたが、今回は我々の生きる地球について。
本書はあまりにも情報量が多過ぎるので、一気にまとめずに適当に分割してまとめていく。
なお、今後は以下についてまとめ記事を書いていく予定。(順不同)
- 力学
- 熱力学
- 地球大気の鉛直構造
- 地球大気の熱収支
- 地球大気の運動
- 地球大気の観測
- 降水過程
- 気象予報
- さまざまな気象現象
- さまざまな気象災害
- さまざまな気象情報
🌎地球の成り立ち
おさらい:太陽の誕生
- 前回のエントリーの通り、まずは塵やガスが集まって星雲を作り、星雲が自己重力によって縮む事で「原始星」が誕生。
- 原始星の中心温度が1千万度に達すると核融合反応が起き、そこから生み出されるエネルギーによって光り輝き「恒星」となる。
- この恒星が「原始太陽」。原始太陽に取り込まれなかった塵やガスは周囲を取り囲んでいる状態となり、「原始太陽系星雲」よ呼ばれる。
原始地球の誕生
原始海洋の誕生
- 原始地球に惑星落下や火山爆発によって、脱ガスが発生し、水蒸気が発生。
- やがて惑星衝突や火山活動が減り、表面温度が下がる。
- 表面温度が下がると、水蒸気が冷やされ、降水が発生し、「原始海洋」が誕生。
【補足】
脱ガスの組成は、水蒸気88%、二酸化炭素6%、窒素2%、硫黄1~2%、鉄1~2%、塩素0.3%、その他0.1%以下・・・・・現在の地球大気とほぼ同じ。
原始大気の誕生
- 脱ガスにより発生した硫黄や塩素の化合物が海に溶け込んだため、原始海洋は酸性であった
- 空気中の酸性成分が海に溶けたため、「CO2」と「N2」が残った
- まだ降水過程にあったため、岩石や鉱物に含まれるCa、Mg、Na、Kが海に流れ込み、酸性の海が中和される
- 中和された海に、空気中のCO2が溶け込む
- CO2とCaが反応して、「炭酸カルシウム」を形成(海底に石灰岩として沈降している)
- H2O(水蒸気)は紫外線によって光解離して、Hは地球外に出ていき、O2は岩石や鉱物の酸化に使われた(この時点では空気中に酸素は存在しない)
【補足】
地球の炭素は海底の炭酸カルシウムでほぼ固定されている。金星や火星にはCO2が多くて人間は住めないが、地球のように海洋を持っていれば変わっていたかもしれない。地球が「水の惑星」と言われるのが納得できますね。
現在の大気構成の誕生
- 海洋中の炭素や窒素やリンからアミノ酸が生成されて、アミノ酸から「バクテリア」が生成
- バクテリアは原核生物であるため自己増殖し、進化し、光合成のできる「シアノバクテリア」が誕生
- シアノバクテリアより発生した酸素によりオゾンが生成されて「オゾン層」が発達
- オゾン層で紫外線が吸収されるため、紫外線量が減り、生物の繁殖範囲が広がる(過度な紫外線は細胞核の染色体を破壊して細胞増殖を不可能にする)
- 生物が更に活発になると、光合成も活発になり、更に酸素量が増え、更に紫外線も弱まる
- 現在から3億8000年前には森林も登場し、酸素量も安定した
⛅地球の鉛直構造
「垂直」はある線や面に対して90度をなす方向であるが、「鉛直」は重力の方向を示す。 (鉛に糸をつけて木の板に垂らす。板が真横であれば糸も90度であるが、板を傾けると糸の角度は変わる。しかし鉛は常に同じ位置にある。この「板に対する糸の方向=鉛直方向」という。)
今回は地球の外側から内側にかけて説明していく。
外気圏
- 厚さ
- 地上800km~約10000km
- 温度
- 概念としては高温(分子は活発に動き回ってるので概念としては高温だが、空気が稀薄であり分子の絶対量が少ないので体感としては熱さを感じない)
- 特徴
- 空気が希薄なので、原子・分子が他とぶつかる事も稀
- 地球の引力を振り切って宇宙に脱出する原子・分子も存在する(脱出速度。計算式あり)
熱圏
- 厚さ
- 地上80km~約800km
- 温度
- 概念としては高温(分子は活発に動き回ってるので概念としては高温だが、空気が稀薄であり分子の絶対量が少ないので体感としては熱さを感じない)
- 特徴
- 「大気組成」について
- 重力による分離により、分子よりも原子の形で存在
- この原子が太陽放射の0.2μm以下の紫外線やX線などを吸収し、電離する事で、高温になる(「光解離」により分子が原子に、「光電離」により原子が電子とプラスイオンに)
- 「電離層」について
- 紫外線を吸収する事で原子が電離する。電離すると電子とプラスイオンになり、この密度が高いところが「電離層」と呼ばれる
- 高さによる違い
- D層:地上60km~90km
- E層:地上90km~130km
- F1層:地上150~220km
- F2層:地上220~800km
- 電離層で生じる現象
- オーロラ:E層に存在する原子と、太陽から放射した荷電粒子が衝突して発光
- 電波信号:地上から発信された電波は、電離層で屈折し地上に届く(屈折度合は「電子数密度」「電波の波長や周波数」で決まる)
- 通信障害:デリンジャー現象と呼ばれる。太陽の活動が活発になると電離も増加するため、通信中断などが発生する(短波への切替により回避可能)
- 「大気組成」について
中間圏
- 厚さ
- 地上50km~約80km
- 温度
- 高度と共に下降する(酸素分子量が少なく、太陽エネルギーを吸収する力がないため)
- 特徴
- 大気組成は対流圏~中間圏まではほぼ同じ
- 熱圏以上になると重力による分離がはじまり、大気組成は軽い分子・原子の割合が増えていく
成層圏
- 厚さ
- 地上11㎞~約50㎞
- 温度
- 高度と共に上昇する(オゾン層により太陽エネルギーを吸収しているため)
- 特徴
対流圏
- 厚さ
- 地上0㎞~約11㎞
- 温度
- 1kmあたり約6.5℃減少する(乾燥断熱減率および湿潤断熱減率の関係)
- 特徴
- 断熱膨張や降水過程など様々な運動により圏内の空気がかき混ぜられる
- 自由大気:地上1.5km以上。地上や海上の摩擦の影響などをあまり受けない。
- 移行層:地上1.5km程度。ほぼ雲底と同じ高度。エクマン層による対流と自由大気による抑圧を受け、空気が入れ替わっている。
- エクマン層:地上50m~1.5km程度。昼間は対流混合層が現れ、夜間は安定境界層が現れる。
- 接地層:地上0~50m程度。気体は流体であり摩擦が生じるためあまり変化が現れない。
- キャノピー層:接地層と同じ位置であるが、ビルや森林などにより異なる性質を示すためこの名を用いる。
- 断熱膨張や降水過程など様々な運動により圏内の空気がかき混ぜられる
まとめ
今回は一旦ここまで。
マクロからミクロを見ていく事で興味の幅を持たせつつピンポイントで調べる事ができるなと最近感じている。他分野の学問でも仕事でもそうだけど。
井の中の蛙大海を知らず、なおも空の蒼さを知らず。
序文
東京に出てきて7年になる。
上京期
「地元に貢献するために、10年で何か身に付けて帰ってくる」と言い残し、曖昧な希望と僅かな資格だけを携えて、20歳で上京してきた。
中学時代から目指していたプログラマになり、先輩や上司に鍛えられながら徐々に社会人として形成されていった。
東京にはITのみならず様々な勉強会があるのを知っていたので、積極的に勉強会に参加して社外にも魅力的な人間がたくさんいる事を知った。
SNSを通じて趣味仲間や投資家と知り合い、少なくはない額を騙されたりなどもした。
転職期
東京の酸いも甘いも知っていく中で、自分が本当にやりたい事について模索するようになった。 上京当時は『東京で、自社サービスの開発』がしたいと考えていたが、当時は『東京から出向した大船で、他社システムの保守』をしていたため、最初の転職に踏み切った。
自分で自社サービスを企画・開発できるようになったため、上京当初の目的である『地元に貢献するため』のサービスを企画したが、組織改変が生じた事により企画がお蔵入りとなる。 『東京で、自社サービス』ではなく『地元に貢献するため』という本来の目的を思い出すきっかけとなったため、二度目の転職に踏み切った。
「地元」というよりは「地方創生」に力を入れている会社であったため、会社の掲げる地方創生にコミットしていたが、会社の方針と馬が合わなくなってくる。 「そもそもIT業界で地方や地元に貢献できるのだろうか」「そもそも地元への貢献ではなく社会への貢献がしたいのではないだろうか」と思うようになり、三度目の転職に踏み切った。
『気象』という決定論的カオスを含んだ業界であるため探求心をくすぐられる。 また、防災や交通インフラ、商業活動や農林水産など、幅広い分野にコミットする事のできる業界である点も、社会貢献性が高く魅力を感じている。 更に、これまではSIerとして他社システムにコミットしていたが、元々自社サービスに携わりたい気持ちがあったため、社内SEになれたというのも大きな転機である。
不安期
ようやく腰を据える事ができた・・・と思ったが、東京に出てきて7年が過ぎようとしている。
この7年で何か身に付けたのだろうか。
あと3年で何か身に付ける事はできるのだろうか。
急激に不安と緊張が込み上げてくる。
結局、大海とはなんだったのか。
空の蒼さはなんだったのか。
フレデリックのように仲間たちに語って聞かせてやる事はできるのだろうか。
本来の公約を満たす事ができないと感じた蛙は、再び曖昧な希望と共に、曖昧に期間を延ばす事を検討している。
ロザン菅が物語調で日本史を教えてくれる「京大芸人式日本史」をまとめた。【後編:明治時代~】
前回まとめた『ロザン菅が物語調で日本史を教えてくれる「京大芸人式日本史」をまとめた。【前編:~江戸時代】』の続き。
なお、前提などについては前回のエントリーを参考いただきたい。
📅それぞれの時代
前編で江戸時代までまとめたため、本エントリーでは明治時代以降について見ていく。
✔明治時代
『五箇条の御誓文』が提示され、「天皇主体国家で頑張ろうぜ。士農工商も撤廃で地位は同等な。」となる。
徳川慶喜は、薩摩藩と長州藩が政治の中心だったため明治政府には入れなかった。 また、徳川慶喜が保有してた土地の返還を求められたが、徳川慶喜の周囲の人間は反抗し「戊辰戦争」が勃発。 これにより新政府軍が勝利し、土地は天皇のものになり(版籍奉還)、廃藩置県も実施された。
明治維新
【海外視察】として、岩倉具視・大久保利通・伊藤博文・木戸孝允の「岩倉使節団」が、外国と仲良くするためにアメリカやヨーロッパに派遣。 西郷隆盛と板垣退助は日本でお留守番だったので、4人との意見に乖離が出始める。
留守番組「朝鮮を開国させるために攻めこもう(征韓論)」
派遣組「そんな事したら他の国から攻められるよ、他の国強いよ」
留守番組「意見合わんからやめさせてもらうわ(明治政府から離脱)」
結果、明治政府は朝鮮の開国に成功。 琉球にも沖縄という県を無理矢理置いた(琉球処分)。
【税対策】として、年貢を米で納めさせるのをやめ、「地租改正」により地価の3%を現金で納めるようにした。
【経済活動】として、官営工場である「富岡製糸場」の設立に伴う、西洋人技士や留学生の雇用や機械の輸入。 お金も円・銭・厘に統一し、国立銀行を設立し、「日本銀行券」も発行。 「電信ネットワーク」や「鉄道」、「郵便事業」の登場。 「活版印刷」の発達による新聞の発行。
【教育】として、「学制」が施行されて、全国に小学校ができ、義務教育ができた。
【その他】として、 ランプやガス灯、レンガ造りの建物が取り入れられた。 また、太陰暦ではなく「太陽暦」になった。
大日本帝国憲法の策定
留守番組の西郷は、「ほんま腹立つわ」と明治政府に対して乱を起こした(西南戦争)。
留守番組の板垣は、「五箇条の御誓文の時みんなで決めよう言うたのに一部の人間で決めとるやんけクソが」と、民選議院設立の建白書を提出(自由民権運動)。
「大日本帝国憲法」は、自由民権運動に賛同した人達の増加により、専制君主制から立憲君主制になった事で定められる。 本憲法下に「貴族院」と「衆議院」の2つの議会が置かれ、衆議院には自由党と立憲改進党が過半数を取った。 (大日本帝国憲法は、皇帝が強かったドイツの憲法を参考にしている)
日清戦争
憲法と議会が開かれた事で、日本はある程度まとまるようになってきたので、次は海外との戦い。
不平等条約を結んだままなので、このまま対抗していくのは不利である。
「関税自主権の確立」と「領事裁判権の撤廃」を目指し、外務大臣を通じて交渉をしてたが実らず。 そんな時に「ノルマントン号事件」が起きたため、条約改正の声が大きくなった。 その後、ロシアがアジアに進出するのを恐れたイギリスが、領事裁判権を撤廃し、関税自主権も回復した。
領事裁判権の撤廃でイケイケになってた日本は、「日清戦争(朝鮮開国に伴う清との領地争い)」により清に攻め入る。 日本は清に勝ち、「下関条約」により、朝鮮を独立させる事・清の港を使わせる事・遼東半島を渡す事を要求した。 (「遼東半島は清に返せ」とロシア・フランス・ドイツが言ってきた。(=三国干渉))
日清戦争の恩恵として、勝利して得た金を軍事や産業に使った事で「紡績業」や「製糸業」が発展し、輸出が増加。 戦争には鉄が必要になるため「重工業」が発達し、八幡製鉄所も作り、造船所も増加。
公害問題は、これらの工業の発展により生じた。 足尾銅山の鉱毒が川に流れ込んだ事で大きな被害が起き、地元議院の田中正造が政府に対策を訴える。 こういう問題に対抗して、労働運動や社会主義運動が起こり、幸徳秋水が天皇の暗殺を企てた。 こういった反政府運動を取り締まるために「治安警察法」が制定された。
日露戦争
この辺りから、欧米の近代文化が急速に取り入れられ始めた。
中江兆民は、フランスの思想家・ルソーの「社会契約論(人は生まれながらにして自由平等)」を日本語に訳し、自由の発想を広めた。 徳富蘇峰は、日清戦争後の三国干渉の影響で「国家主義(国民の利益より国家の利益を優先)」を唱える。 明治になりキリスト教も解禁され、教派神道も広まり、仏教界も立ち直り始めた。 教育も国家主義的な学校令や教育勅語などが定められた。
一方、清で「義和団事件(清から外国人を追放)」が起こり、清は欧米諸国に宣戦布告する。 しかし敗退し、「北京議定書」という不平等条約を結ばされる。
味を占めたロシアが満州を支配しようとするが、それに腹が立った日本は「日露戦争」を起こした。 日英同盟によりイギリスを味方につけた日本はロシアに勝ち、「ポーツマス条約」を制定し、南樺太などを取得した。
日露戦争に勝利したが賠償金がもらえなかったため、「圧勝だったのにおかしいやろ」と国内で暴動(日比谷焼打ち事件)が起きる。 これが都民民衆運動のきっかけとなり、「大正デモクラシー」に繋がっていく。
清とロシアを倒した日本は、欧米に衝撃を与えた。 また、日本は列強の植民地政策を真似て、韓国を植民地にした。
✔大正時代
「大正デモクラシー」と呼ばれる民主主義が叫ばれるようになり、 吉野作造は「民主主義」を、美濃部達吉は「天皇機関説」を訴えた。
第一次世界大戦
<ドイツ・イタリア・オーストリア>の三国同盟 VS <イギリス・フランス・ロシア>の三国協商
ヨーロッパでは、イギリスとドイツが中心に植民地争いが勃発。 そんな中、オーストリア皇太子が領地であるセルビアの視察をしてる最中に、セルビア人の青年に殺害され、「第一次世界対戦」が勃発。
日本は日英同盟を結んでたため戦争に参加し、中国にあるドイツ基地に攻め入る。 主戦上はヨーロッパだったため、中国はガラ空きで日本が勝利。(二十一ヵ条の要求)
のちにアメリカも参戦した事で、第一次世界対戦はあっけなく終了。
「国際連盟」は、第一次世界対戦をきっかけに、戦争のルールとして制定。 (提案したアメリカはこれに入らなかった)
第一次世界大戦により、ヨーロッパの工場は壊れたため、日本からの輸出が増えて成金に。 しかし、ヨーロッパの復興が進むと輸出機会も減り、日本の雇用が減り不景気に。
「米騒動」は、戦争による格差の拡大に伴い、商人が米を買い占め、米の値段が高騰。 米を買うのは主婦なので主婦が激怒し、米屋を襲った。
「労働運動」は、この頃から盛んになり、労働者は自分達の権利を守ろうとメーデーを起こす。 また、女性も権利の主張をするようになり、平塚らいてうや市川房枝が「婦人参政権」を唱える。
「普通選挙法」は、加藤高明が首相になって制定されたが、選挙権を持ってるのは25歳以上の男性のみ(婦人参政権の無視)。 また、治安を維持するためなら何でもありの「治安維持法」が成立。
ちなみに、「関東大震災」も大正の出来事。
✔昭和
「世界恐慌」により、アメリカの証券会社の株が劇的に下がり、各国が対策に出る。
アメリカは、雇用を増やすためニューディール政策により公共事業を作る。
イギリスとフランスは、他の国からものを買わないようにブロック経済。
ドイツとイタリアは、自国の領土を広げるためファシズム。
日本の政治もめちゃめちゃに。
「五・一五事件」により、海軍の青年将校が、犬養毅を殺害。
「二・二六事件」により、陸軍が、首相・岡田啓介を殺害。
この辺りから日本の政治は軍が支配するようになったが、陸軍と海軍がそれぞれの利益のために動いてしまう。
不景気は戦争に繋がる。
- 中国は、「満州事変」により反日デモを起こす
- 中国は、国際連盟に日本を訴え、国際連盟は日本に満州から撤退するよう要求する
- 日本は、軍政治なので軍縮など考えられず、これを拒否し国際連盟を離脱
- 日本は、ドイツ・イタリアと組んでしまう(イギリスの敵国なのに・・・)
- 中国は、これにキレて、「日中戦争」勃発
- 日本は、日中戦争の仲介役にドイツが入るも聞き入れない
- 中国は、アメリカ・ソ連・イギリスが味方だったため、強気だった
- 日本は、「国家総動員法」という、戦争のためなら何でもしないといけない滅茶苦茶な法律を制定
- 世界は、【第二次世界大戦】が開始(<ドイツ・イタリア・日本>の枢軸国 VS <英国・米国・ソ連・中国>の連合国)
- 日本は、第二次世界大戦でドイツが戦ってるところに便乗しようとする
- 米国は、便乗してきた日本にキレる
- 日本は、日中戦争で中国と戦ってるのに、アメリカ・イギリスも敵に回してしまう
- 中国は、アメリカ・イギリスと共に、日本に降参するよう要求(ポツダム宣言)
- 日本は、これを拒否した
- 米国は、日本に原爆を落とし、終戦
敗戦した日本は、アメリカを中心のGHQに占領され、弱体化および民主化として「治安維持法の廃止」「特別高等警察の廃止」「財閥の解体」をさせられる。 戦争の責任は、政治家と軍人が東京裁判にかけられて処罰。 「天皇は人間である」という事を宣言させられた。
「選挙法」も変わり、選挙権が20歳以上の男女に変更。 労働組合を作ってもよくなり「労働基準法」も設定された。 教育勅語はなくなり「教育基本法」が制定され、教育機会の均等化・義務教育9年・男女共学が決定。
そして、「日本国憲法」(国民主権、平和主義、基本的人権の尊重)が制定された。
😶後編のまとめ
前編では蘇我一族が調子に乗って放火させられていたが、後編では日本が調子に乗って原爆を落とされている。
また、明治時代にある程度改革が進んだ事で、現代日本があると言っても過言ではなさそう。
あと、大正って大変だったんだな・・・。
余談
「学生時代に勉強したでしょ」と言われる事があるけど、あまり覚えてない。 断片的には思い出せるけど、具体的に思い出す事はできない。
使わない知識であっても確実に脳には格納されてるはずなので、どうにかして引っ張り出せたらいいんだけど、どうやったら引っ張り出せるんだろう。
後から入れる知識についてはインデックスを付けて格納すればいいから取り出しやすいけど、過去にインデックスも付けずに煩雑に格納した知識なんて、引っ張り出せないと思うんだけど、何か手法はあるのかな。
ロザン菅が物語調で日本史を教えてくれる「京大芸人式日本史」をまとめた。【前編:~江戸時代】
一昔前に本屋に行って、「ロザン宇治原じゃなくて相方の菅が書籍出してるやん、買ってみよ」と思って買った本。
前回の「犯罪心理学」も同じだけど、勉強系の書籍はちゃんとメモしながら読むけどその結果をどこにも出してないので、今回はこれをまとめていく。(一部独自に調べて記載した箇所もある)
関係ないけど、菅さんの笑顔がとても好きです。
😶前置き
本書は物語調で進んでいくため冒頭から読んだ方がもちろん面白いが、本エントリーは勉強内容をまとめてるだけなので、順番などは無視する。
あと、まとめてたら長くなったので、前編・後編で分けた。
- 前編:縄文時代~江戸時代
- 後編:明治時代~昭和時代
🤔結論:土地は誰のもの?
日本史を学ぶ上で注目すべきポイントは「土地は誰のものなのか?」という事。
縄文時代~古墳時代は個人のものであったが、奈良時代以降は朝廷のものとなっていき、天下統一により幕府が管理するようになり、開国をきっかけに外国を視野に入れる必要がでてきた事が分かる。
時代 | 説明 |
---|---|
縄文時代 | みんなで仲良く狩猟。 |
弥生時代 | 耕すのが上手くて偉い人が国を作る。 |
古墳時代 | 古墳の大きさで権力を表す。 |
奈良時代 | 中大兄皇子と中臣鎌足による「大化の改新」による公地公民で天皇のものに。(納税が面倒な農民は働かなくなったので「墾田永年私財法」を設け、ちゃんとやれば土地を個人に返す) |
平安時代 | 耕せば自分のものになるがルールがなかったので、貴族に土地を渡して守ってもらってた。土地持ちの貴族同士での争いが起きたため用心棒(武士)を雇う。用心棒の二強である源氏と平氏で争い、源氏勝利。 |
鎌倉時代 | 戦えば土地がもらえる「御恩」と「奉公」。武士出身の初心者に政治を任せていたが元寇で破綻。 |
室町時代 | 鎌倉時代と同じく「御恩」と「奉公」。南北朝時代には、当時の朝廷は2つあったが足利義満が南北朝を統一。戦国時代には、各地の守護の力が強くなり土地の取り合い。 |
安土桃山時代 | 天下統一。全ての土地を幕府で管理。 |
江戸時代 | 安土桃山時代と同じく幕府で管理。「禁中並公家諸法度」により幕府が朝廷も管理。鎖国してたが黒船が来て幕府がビビり大政奉還により朝廷へ。 |
明治時代 | 黒船来航により「日本の土地を誰が支配するか?」から「外国から守るにはどうしたらいいか?」になる。外国遠征組の意見もあり「外国文化取り込んでいこうぜ」という話だったが、「朝鮮開国させようぜ、日本の領地広げようぜ」となってしまう。日清戦争や日露戦争が勃発。 |
大正時代 | 韓国も朝鮮も独立。第一次世界対戦をきっかけに「戦争のルール決めようね」となる。 |
昭和時代 | 日本が満州に攻めいるも、中国・イギリス・アメリカに叩かれ、原爆落とされて終戦。 |
📅それぞれの時代
前項でざっくりと紹介したので、本項はもう少し掻い摘んで説明する。
✔縄文時代
「竪穴式住居」に居住。
「磨製石器」で狩猟。
Q.「何で土器に縄で模様つけたの?」
A.「自分のものを分かりやすくするため」
✔弥生時代
「高床式倉庫」で穀物などを貯蔵。
「環濠集落」で生活。有名なのは登呂遺跡と吉野ヶ里遺跡。
Q.「貧富の差はあったの?」
A.「稲作が始まったが、下手なやつは下手だし、上手いやつは上手い。それだけ。」
Q.「240年頃、卑弥呼さんはどこで何してたの?」
A.「近畿か北九州だが定かではないが、邪馬台国と呼ばれる日本国内の一つの国(貧富差はあるが複数の集落)を治めていた。魏が隣国(呉/蜀/高句麗)と仲が悪かったから仲良くしてあげてた(=魏志倭人伝)」
✔古墳時代
これまでの時代では集団墓地だったが、一個人のお偉いさん(大王)だけが入る墓地(古墳)が作られた。
Q.「古墳にあるハニワって何?」
A.「本当はお偉いさんと一緒に生き埋めにされる予定だったけど、さすがにそれはダメだろって事で、ハニワを一緒に入れるに。」
✔飛鳥時代
「冠位十二階」で地位を人目で分かるように。 実力社会になったのはこの頃から。(馬小屋育ちの聖徳太子が摂政に)
Q.「なぜ隋の煬帝に手紙を?」
A.「隋は自分が中心で他が下だと思ってるから、『これからは対等に外交しような』って意味を込めて。」
Q.「隋からお叱り文を受け取ったはずでは?」
A.「妹子がワザと無くした」
✔奈良時代
645年、聖徳太子が死んでから調子に乗ってた蘇我一族。 その一族をぶっ潰したのが、中大兄皇子と中臣鎌足。 この二人により「大化の改新」が行われる。
Q.「中臣鎌足は何を?」
A.「蘇我蝦夷(入鹿の父)の家を放火」
Q.「他には?」
A.「公地公民:土地は我々が管理する。そして貸出す。(班田収授法)
税:租=作った米の3%。庸=建設の手伝い。調=郷土品の献上。
国郡里制:各地を治めやすいように。国治や郡治に従うように」
708年、「和銅開珎」が誕生。
Q.「初の貨幣なの?」
A.「1998年まではそう信じられてたけど、実際はもっと前に持統天皇が<富本銭>を作ってた。」
Q.「何で穴空いてるの?」
A.「持ち運びやすくするため」
✔平城京
710年、なんと素敵な平城京。
Q.「古事記って誰が書いたの?」
A.「稗田阿礼という、一度聞いた事は忘れない天才。」
Q.「日本書紀って誰が書いたの?」
A.「天武天皇の息子である舎人親王」
Q.「東大寺って何で建てたの?」
A.「国の元気がないときに聖武天皇が神頼み的に作らせてた。国分寺や国分尼寺も。」
Q.「『墾田永年私財法』って何?」
A.「当時は人口増加してたけど農地は増えてなかったから、農民は『はよ耕せや』と言われてて疲弊してた。で、政府が『ちゃんと耕したら土地ごとあげる』と言ってきた。それが墾田永年私財法。」
Q.「そうなると『結局土地って誰のものなの?』ってならない?」
A.「それは次の時代……」
✔平安京
794年、鳴くようぐいす平安京。 桓武天皇が平安京を作った。
Q.「てんさいって何?」
A.「比叡山に、延暦寺を建て、天台宗を開いた、最澄。」
Q.「しんくうって何?」
A.「高野山に、金剛峯寺を建て、真言宗を開いた、空海。空海は字が綺麗で有名。"弘法も筆の誤り"の語源。」
桓武天皇は、「健児」により農民の徴兵制を廃止して、貴族内でどうにかしようとした。 勘解由使を各地方に送り、変な事してないか警察的な役割をさせてた。 蝦夷討伐として東北への攻めこみも行った。
菅原道真は、「遣唐使を廃止」。 中国の文化が入らなくなり、ひらがなや寝殿造といった国風文化が広がった。 (今となっては学問の神様と言われてるが、実権を握ってた藤原一族によく思われず左遷されてた。)
藤原一族は、「摂関政治」で有名で、一番権力を握ってたのが藤原道長。 農民は節税で土地の寄進をしたりしてたが、腕力で土地をブン取ろうとする輩がいたため、用心棒=武士により防いでいた。
平将門は、そんな武士の中でも力をつけており、「俺が国を治める」と反乱を起こした。 同時期に藤原純友も反乱を起こし、合わせて「承平・天慶の乱」と呼ばれる。 反乱軍は負けるが、力を示すには十分だった。
源氏と平氏は、当時力をつけてた武士軍。 摂政政治中の藤原一族も「保元の乱」でぶっ壊れ、後白河天皇軍が勝利。 勝利側についてた平清盛と源頼朝が「平治の乱」を起こし、平清盛が勝利。 平清盛が武士として初めて太政大臣(総理大臣)になるも、のちに平氏は源頼朝に滅ぼされる。
✔鎌倉幕府
1185年、国ごとに守護・地頭を設置した。
1192年、源頼朝が征夷大将軍に任命。
Q.「次は?」
A.「執権。北条泰時。」
Q.「仕えるのは?」
A.「御家人=武士。守護は国ごとの武士の責任者。地頭は荘園ごとの責任者。」
Q.「封建制度は?」
A.「御恩と奉公の精神。ちなみに"一生懸命"の語源。」
Q.「何で頼朝は、弟・義経が嫌いなの?」
A.「一人だけ勝手にいろんな地位もらってて腹立つ」
のちに、モンゴル兵が攻め込んでくる「元寇」が起こる。 結果的には勝利するが、鎌倉幕府のずさんな政治が浮き彫りに。
✔室町幕府
後醍醐天皇は、鎌倉幕府のずさんな政治を見て「経験ある俺が政治した方が確実」と言いはじめる。 後醍醐天皇は武士が嫌いだったため武士にとっては辛い制度も出てきた。
足利尊氏は、「武士に辛い制度は嫌だし、いっちょやったるわ」と反乱起こす。 (後醍醐天皇を追いやり、良い暮らしをしてなかった光明天皇を味方につけて、60年かけて幕府を開く。)
足利義満は、三代将軍になり、南北朝を統一。ちなみにこの人が金閣寺を建てた。 一休さんにあれこれ言ってたのも義満だが、一休は切れ者というわけでもなく、大人に取り入るのが上手くて分からん事は聞いてたらしい。
戦国時代(まだ室町)
義満の死後、幕府の力が弱くなり、守護の力が強くなった。
足利義政は、第八代であり、自分に子供ができなかったので弟に政権を渡そうと持ちかける→その後子供ができる→後継ぎを決めきれない優柔不断な義政は「自分らで決めて」と放り出す→後継ぎ争いにより「応仁の乱」が発生。
そんなしょうもない幕府を見て、
農民は「鍬持ったら俺らも強いのでは?」となり一揆が増え、
守護は「今なら幕府倒せるのでは?」となり戦国大名が誕生した。
織田信長は、今川義元を破り、足利義昭を15代将軍にし、天下統一前に明智光秀に燃やされた。
豊臣秀吉は、明智光秀を破り、太閤検地や刀狩を実施。
徳川家康は、秀吉の死後、西軍の石田三成と対立し、関ヶ原の戦いにより勝利し、征夷大将軍となり、江戸に幕府を開いた。
また、この時代は海外からの渡航も多く「南蛮貿易」があった。 ポルトガルから種子島に鉄砲が伝来。 スペインからザビエルが来てキリスト教が伝来。 (ちなみに日本は貿易に弱くてめちゃめちゃ舐められてた)
✔江戸時代
「士農工商」により、身分がはっきり分かれるようになった(身分を簡単に変えてしまうと税が回収できず幕府が成り立たなくなるため)。 ただし、武士も自費で参勤交代していたため、徳川家に信用される「親藩」や「譜代」は近くに置かれ、信用されてない「外様」は遠くに住まわされた。
「禁中並公家諸法度」により、幕府が朝廷に対して決まり事を作り、朝廷と対等に立った。
「禁教令」により、キリスト教を禁止した(幕府が一番でないと困るため)。 天草四郎が筆頭で、キリスト教徒を引き連れて「島原の乱」を起こした。 これにより更に厳しく取り締まるようになり、スペインとポルトガルとの外交を禁止し、イギリスと中国のみ貿易するようにした(=鎖国)。
「文治政治」により、儒教の思想に基づいた政治が行われるようになった(元々は武力により厳しく取り締まってた)。 この政治は5~7代まで続いた。
江戸の三大改革
8代将軍・吉宗の時には、幕府は貧乏になってた。 この貧乏を打破するために、様々な改革が執り行われた。
「享保の改革」により、「定免法」での米価の安定を実施。 しかし、豊作時は余って武士の給料が下がり、凶作時は農民が一揆を起こした。
田沼意次により、享保の改革での波及で再び財政難に陥った幕府を、「株仲間」の奨励策により、農業依存の幕府経済を改める。 しかし、幕府に上納金を納める事で商業の「独占権」が得られたため、賄賂が横行する。
「寛政の改革」により、田沼時代での波及で物価高騰=貨幣価値下落に陥った幕府を、質素倹約な政治とした。 商業のために出稼ぎにくる農民達を「旧里帰農令」により帰らせたりなど、商業に厳しい政治となった。 しかし、田沼時代に健全化した財政が再び悪化に転じた。
「天保の改革」により、賄賂の横行を「株仲間解散令」により征伐。 しかし、それ以外については寛政の改革の倹約政治に似ており、財政は悪化して失敗に終わった。
幕末
幕末のポイントは「鎖国を続けるか、開国するか」。
ロシア・イギリス・アメリカ「通商しようや」
幕府「嫌だ(異国船打払令。漂流者を助けてくれたのに砲撃したりしてた)」
イギリス・清「アヘン戦争しようや」
幕府「イギリスの方が小さいのに勝ったらしい。怖い。(イギリス船に物資を提供)」
ペリー「開国してや」
幕府「黒船だ。黒いし、デカいし、怖い。(アメリカ船に物資を提供)」
幕府「朝廷さん、藩さん、どうしたらいいかな」
朝廷・藩「は?今まで意見求めて来なかったのに、急に求めてくんなや」
井伊直弼「怖いから日米和親条約とか日米修好通商条約に調印したよ」
一橋派「は、ふざけんなし」
幕府「うるせえ(=安政の大獄で反対派を罰する)」
水戸藩「は、ふざけんなし(=桜田門外の変で井伊直弼を罰する)」
薩摩藩「幕府は朝廷とあるべきでしょ(=公武合体派)」
長州藩「幕府なくていいし、天皇中心で外国打ちのめそうや(=尊王攘夷派)」
土佐藩「朝廷に仕えるという意味では同じなんだし軍事協力しようや(=薩長同盟)」
幕府「討幕怖いので、政権を朝廷に返します(=大政奉還)」
😶前編のまとめ
江戸末期までは、日本国内だけの話が主である事が分かる。(中国とは昔からやり取りはしていた)
後編の明治時代からは、日本国内だけでなく海外も見据えたお話になってくる。
本書は本当に分かりやすくて、幕末ってごちゃごちゃしてるイメージあったけど、物語調なおかげで脳に定着できた。みなさんも是非。
興味本位で読んだ犯罪心理学の入門書「プロファイリング」をまとめた。
2,3年前。BS放送のDLifeで『クリミナルマインド』がやってたので見てた。
異常犯罪を突き止めるために用いられる「プロファイリング」。
気になったので本を買って勉強したけど、勉強内容をどこにも出してなかったので、今回はこちらについて記載する。 なお、今回のまとめにあたり、章の順番などについては無視している。
※異常犯罪の性質上、不快な表現を直接的に用いてるので、苦手な人はブラウザバックしてください。
🤔プロファイリングとは
✔目的
以下の情報を刑事司法システムに提示する事。
- 犯人の社会的・心理学的評価
- 容疑者の所持品の心理学的鑑定
- 逮捕された容疑者を尋問のための参考意見と戦略
✔空想と現実
プロファイリングは様々な作品で取り上げられている。 (シャーロックホームズ、レッドドラゴン、ゾーイコウラー、など)
プロファイリングが最も威力を発揮するのは、未知の犯人が精神異常を示しているような事件。 (内臓の抉り出し、四肢切断、レイプ、放火、小児性愛、など)
そのどれもが非現実的なものと認識されているかもしれないが、現実的にはかなり正確なものである。 しかしながら実際は、プロファイリングにより捕まる事より、別要因で捕まる事の方が多い。 (被害者が目撃した、別事件で捕まった、など)
✔学術的原因論と理論的根拠
様々な角度からの原因論が挙げられ、それぞれが統合する事で真価を発揮する。
- 心理学:知能障害、人格的特徴、思考パターン、性格的欠陥
- 精神医学:無意識の葛藤による症状(超自我の外傷(過剰発達?未発達?))
- 社会理論:有機的社会から機械的社会への近代化、社会と個人の間の緊張、無秩序への適用
- 地理学:相対的で多岐に渡る距離感(移動手段、道中への魅力や知識、心的障害による別ルート、実際の距離)
人格は、「生物学」「文化」「環境」「共通体験」「独自体験」の五要素が寄与して構成される。
人格は、犯行現場に現れ、犯行手口は類似し、手口から見える目印も変わらない。
人格は、時が経っても基本的には変わらないため、本質的であり、捜査の手助け=根拠となる。
(例:快感や自信が増すたびに、地理的な活動範囲は広くなったり、捜査状況がバレてしまうと犯行場所の置換えも発生するが、本質的な人格を理解していると移動場所が推測できる)
😈プロファイリングにおける加害者
✔秩序型/非秩序型
「秩序型」か「無秩序型」かを探る事が、最初のカギとなる。
- 秩序型
- 知能が高く、社会にも適応し、妻子もおり、捜査にも協力的
- 尋問は、細部について確信をもって直接的に行う
- 無秩序型
- 犯行を計画する能力が低く、物的証拠も残しがち
- 尋問は、カウンセラーのように同情を示し、情報をほのめかすように行う
✔連続殺人
類型として、以下に分類される。
- 幻覚型:神や悪魔による幻視や幻聴。無秩序型に多い。
- 確信型:特定集団の皆殺し(娼婦、カトリック、など)、ストーカー気質は秩序型
- 快楽型:暴力と性欲の結びつきが強い。過程を重視。享楽型は女が多い。
- 権力・支配型:被害者を屈服させるのが目的。絞殺が多い。
連続殺人を行う思考のサイクルは、以下のように繰り広げられる。 (犯罪が進行すると、人格が変化し、計画性が失われ、サイクルが早くなり、残虐性が増す)
- 歪曲された思考
- 自己像の崩落
- 心理的反応
- 行動的反応(殺人)
- 地位回復
- 最初に戻る
- 地位回復
- 行動的反応(殺人)
- 心理的反応
- 自己像の崩落
犯行現場の補足要因として、以下が挙げられる。
- 「目隠し」「顔面殴打」は、非人間化させるために行う
- 「処分」「四肢切断」「拘束」「偽装工作」は、秩序型の傾向
- 「形見」「戦利品」を持ち帰っている可能性
✔放火
ギルベートによる「火災のタイプ」は以下の通り。
- 自然作用
- 失火
- 原因不明
- 不審火
- 放火
マシーによる「放火の理由/目的」は以下の通り。
- 組織的犯罪
- 火災保険
- 住宅詐欺
- 商業的営利
- 心理的
ライダーによる「放火犯の分類」は以下の通り。
- 妬みに動機づけられた成人男性
- ヒーロー志向
- 興奮放火犯
- 放火狂
ダグラスによる「放火犯のカテゴリ」は以下の通り。
- 破壊
- 興奮
- 復讐
- 利益
- 隠蔽
- 政治
✔レイプ
『レイプ』とは、他社の意思に反して力づくで性交をする暴力犯罪。
犯罪者の家庭は、支配的でサディスティックな母と、無関心で受け身な父である事が多い。
類型として、以下に分類される。
- パワー確認:目的は自尊心を高める事。低能で自己評価も低い。理解を示す尋問が適切。
- 報復:目的は女性を傷つける事。有能だが気性が荒い。婦人警官による尋問はNG。
- 搾取:男性としての優越感を表現・派手で暴力的。秩序型なため事実を明確にして尋問すべき。
- サディスト:性的・攻撃的空想の表現。強迫的人格であり、レイプ7つ道具を持つ。ラポールを築く折衝的な尋問。
報告に暗数が多い理由として、以下が挙げられる。
- 羞恥心
- 報復の恐れ
- 汚名
- 警察や裁判への信頼感の欠如
✔小児性愛
『小児性愛』は、思春期以前の子供との性行為により性的興奮に達する。
類型として、以下に分類される。
- 状況型
- 退行:自尊心が傷付けられるなどにより、未知の子供を一過性で襲う
- 道徳的無差別:手近にいるあらゆる人が対象で、子供に限っていない
- 性的無差別:性的なあらゆる実験をしたいだけで、子供に限っていない
- 単純:精神障害があり、これにより正常な判断ができていない
- 性癖型
- サディズム:性的満足と暴行が結び付いており、愛情は存在せず、優越感に浸り、殺す
- 誘惑:子供に求愛し、子供からの愛情を待ち望む。精神が成長していない
- 固着:支配しやすくて文句も言わない子供を選ぶ。愛しているが害しはしない
😥プロファイリングにおける被害者
加害者の心的・性的な癖や恐怖などが、被害者の傾向として現れる。
- 身体的外観の一致性(赤髪を持つ、娼婦に似ている、元嫁に似ている、など)
- 知能レベルの一致性(同程度の友人と交流している可能性)
- ライフスタイルの変化(好きで引越したのか、追われて引越したのか)
😶最後に(余談)
「異常犯罪なんて勉強して何になるの」と言われた事があるが、仕事で役に立つ事がある。 上司や部下の背景を知る事で、どういう思考をする人で、今後どのような行動を起こす人なのかが何となく見えてくる。
そういった対人スキルの一つとしてプロファイリングは有効に使えると、本書を通じて感じた。
本書にも「プロファイリングは全ての人に利用できる」との一節があるが、まさにその通りである。